KenMiki & Associates

旅と同時に進む編集

フランスのビジュアル・マーチャンダイザーでパリの老舗百貨店、ギャラリーラファイエットの仕事を中心に幅広い活躍をするマリー・エレーヌ ベルガセムさんが事務所にやって来ました。彼女が僕の事務所にやって来るのは今回で4度目。初めての出会いは5年前です。
ドイツの出版社、TASCHEN(タッシェン)から出版された『 JAPANESE GRAPHICS NOW ! 』という書籍に掲載されていた僕の作品に興味を持ってくれ、来日の際に事務所を訪ねてくれたのです。彼女は、すごい親日家で今回の来日で10回目だそうです。初めて日本に来た時の滞在期間が2ヶ月。今回も1ヶ月近い滞在ということです。初めて出会った時、彼女はなぜか僕の事務所にギャラリーが併設していると思い込んでいたようで「ギャラリーはどこにあるの?」と尋ねてくるのです。当時は、ギャラリーどころか足の踏み場もないぐらい狭い事務所でした。どうして、事務所にギャラリーが併設していると思ったかはいまだに謎ですが、僕の作品に興味を抱いてくれ来日の際には毎回訪ねてくれるのです。
当時、お互いの作品を紹介し合い、なんとなくヴィジュアルで歓談。深いコンセプトの話にいたれなかったと思います。僕の事務所でのヴィジュアル歓談の後、彼女は当時堂島にあったガラスの箱のようなギャラリーdddへ直行。今は、北堀江に移動してしまいました。そこで、「三木さんの作品集はありませんか?」と尋ねたようです。その時に接客されたのが、下に掲載している写真のマリーさんの横にいる小笹さんです。その後、彼女達は親交を深め大の仲良しになっていったそうです。彼女達曰く、僕をきっかけで「親友になったの。ありがとう!」と言ってくれます。実はこの話、昨日お二人から聞かされて驚いたのですが、お互いを結びつける「親友のキューピット」に知らない間に僕が関与していたようです。ちなみに小笹さんは、フランスに4年以上の留学経験がありフランス語がすごく堪能です。昨日は、お食事も含め4時間近く彼女たちとご一緒させていただきました。小笹さんの通訳に助けられ、コンセプトの話や文化の違いなど、お互いの考えに深く踏み込めてとても楽しい時間を過ごしました。
さて、マリーさんは来日の際、いつもヴィジュアルダイアリーともいえる本を移動しながら制作しています。旅先で彼女の感性に響いたものを写真に撮り、その地でプリント。展覧会のチケットから雑誌の切り抜き、街で配られている販促ツールやお守りにいたるまで、その時に感じたメモやスケッチとともにファイルがされています。旅と同時に進む編集。そこに、彼女の目で切り取られた日本が浮上します。この本、毎回見せてもらうのですが、実に楽しいのです。いわゆる旅のガイドブックにあるような、お決まりの観光ガイドとは一線を画しています。彼女に許可を得て、このコラムでみなさんにもご覧いただこうと思いました。なんか限定のアーチストブックや取材ノートを見ているように感じませんか?彼女と一緒に僕の知らなかった日本を旅しているようで、何だかワクワクしてきます。僕の事務所で撮った三人の写真。明日には、この本に収録されるそうです。