KenMiki & Associates

三木組奮闘記(気づきミュージアム)

みなさ〜ん、年末も押し詰まってお忙しくされていることでしょうね。久しぶりの三木組奮闘記。お待たせいたしました。今回は、お正月休みにゆっくりお読みいただければと思い、13のプロジェクトを一気に紹介するロング・ロングバージョン。6時間近い三木組学生達の汗と涙のプレゼンテーションを大公開する年末ドキュメントスペシャル版。
三木組奮闘記は、大阪芸術大学デザイン学科グラフィックデザインコース3回生の三木組の様子のレポート。僕の授業は、選択授業。毎週土曜日の2コマ。前期と後期で学生がガラッと入れ替わります。それぞれ、15回の授業で課題が2つ。よって約7週で一つの課題を仕上げることになります。グラフィックデザインの手法をベースにデザイン領域を横断的に捉え、自らが研究テーマを設定するコミュニケーションの授業。
クリエイティブを航海に比喩するならば、課題は共通の理解のための灯台のようなもの。どんな船で、どんな航路で、どんな目的で、誰と出会うか、そしてどこを目指すか、全て自分で決める。灯台の明かりが迷った時の起点だとすれば、自分の旅の計画をしっかりたて、航路での状況をとっさに読み取り、時に立ち戻る勇気をもって、旅に出かける。その全てを通して『気づき』という体験を自らのものにする。
僕は、クリエイティブの航海の楽しさについて真剣に語り、自分で切り開く旅の楽しさがどれほどの達成感があるかをアドバイスするだけ。また、時に迷っている人には『理解→観察→想像→分解→編集→可視化』のプロセスを通して希望という灯台の明かりを見やすくするだけ。舟のこぎ方や磁石の見方すら、いきなりは伝えない。「どうすれば遭難せずに自分の目指すゴールに辿りつけるかを自分流で探すことがデザインだよ」と叫び続けるだけ。よって「さあ、どうぞ自由に航海に出かけて!」といわれても磁石の見方すら知らない学生達は、あたふた。始めは「難しすぎる〜」「わからな〜い」なんて声がいっぱい上がります。それでも根気よくクリエイティブの旅の楽しさを語り、時に僕の今の仕事の実際を見せながら『話すデザイン』を続ける。すると、何かに閃いたかのように、一人、二人と敏速に活動する人たちが出てきます。すると、その人たちに刺激を受けるかのように多くの学生達が自由な世界へと旅立ちはじめます。いきなり舟をこぎ出す『体当たり派』、地図を広げ始める『研究派』、オールを削り出す『モノづくり派』、これから起きうる全てをプロジェクト化しようとする『コトづくり派』といった具合に、それぞれの個性が際立ち始めます。僕の授業の主眼は「考え方やつくり方をいかに考えるか」、同時に「学び方をいかに学ぶか」というのが大きなコンセプト。いわば、デザインを通して哲学を学んで欲しいというのが僕の想い。三木組の全ての人がデザイナーになるとは限らないけど、間違いなく何らかの人生を送る。そして、全ての人がどんなカタチであれ、自分の意志で航海をせねばならない。
さあ、今回の灯台の明かりは『気づきミュージアム』。後期前半のプレゼンテーション、学生達のユニークなクリエイティブの航海にどうぞ乗船してやってください。それでは、出発します。「面舵いっぱ〜い」。

コマンドマイナス ⌘−
「先生、私この授業で後悔したくないんです」。Sさんが最初に僕に話しかけてきた言葉。「えぇ?」。「私、いままでの授業でどこか自分を出し切れなくって…。とことんやりきりたいと思いますのでよろしくお願いします」。驚いた。はじめての授業で『学び方を学ぶ』というこの授業の肝を理解している。つまり、『学ぶ力』という、その気、やる気、本気に餓えた自分への挑戦を僕に宣言してきたのです。この『学ぶ力』については、内田樹さんのブログを是非、お読みいただきたい。そのSさんの『気づきミュージアム』のコンセプトは、「笑いは気持ちをクリエイトする」。「私、人をワクワク、ドキドキさせる『気持ちデザイナー』になりたいんです」。「ほぅ。いいんじゃないですか」。「それで、友人と漫才をやりたいのですが…」。「えぇ?漫才ですか?」「はい。オリジナルなネタづくりからはじめて、自分たちのコンビのポスターからグッズまでトータルにブランディングしていきたいと思います」。驚いた。「笑いは、コミュニケーションの魔法の薬」とサヴィニャックがいっているが、まさか授業で漫才をプレゼンテーションしてくるとは。「面白い。笑いを通してみんなに気づきを届けるミュージアムをこの教室で展開するんですね」。「はい」。「ところで、どこかで漫才した経験あるんですか?」「いいえ。お笑いが好きで学園祭とかでやってみたいとは、思ってたんですが…。先生なら私の考え方を理解してくださるのではと思って、この教室が初舞台です」。「教室からデビューするのか!面白すぎます。それでいきましょう!」。「本当にいいんですか?」。「いいよ、告知ツールを大学中に貼り出してドカーンといこうよ!」。こんな会話から始まった彼女との授業風景。隣の教室のSさんを相方にSSコンビが名づけたネーミングが『コマンドマイナス ⌘− 』。まずは、初舞台のご両人の漫才をどうぞご覧ください。



みなさん、いかがでしたか。初舞台の『コマンドマイナス ⌘− 』。ちょっと早口になったりしている箇所もありますが、堂々とした漫才でしょ。物語の組み立て方、場面展開の面白さ。僕は演技指導はできないし、漫才も素人だけど、コミュニケーションを専門とするデザイナーとして、いや一般の素人として観て「おもろい」というのが本音。確かにサヴィニャックがいうように「笑いは、魔法の薬」。
そこで、「ねぇねぇ君たち、今度、あるミュージアムで建築家、プロダクトデザイナー、インテリアデザイナー、グラフィックデザイナーが集うパーティがあるんだけど、もう一度いまの漫才をやってくれない?」「はい。先生のご依頼なら『コマンドマイナス ⌘− 』どこでも出かけていきますよ。通常はマネージャーを通してもらわないと困りますが…(笑)」。「おいおい」。というわけで先日、その集いの場で『コマンドマイナス ⌘− 』が一般デビュー。ここで紹介したビデオより数段上手くなっている。アドリブも増えている。うるさがたのデザイナーがみんな大笑い。いやはや楽しかったと笑い転げたその時です。僕の知り合いの大阪府立大学の先生から「彼女達を講師に招いて大学院生に授業をしてもらえないでしょうか…」。「えぇ!」。「私の授業の中で『課題設定型プログラム』という博士課程の学生を対象にした授業を展開しており、4つのコンテンツで講師をお招きしています」。「はい」。「そのコンテンツが、1 : ディセンシー(礼儀ただしさ)、2 : 俯瞰する力、3 : のたうちまわる根気、4 : キュレーションの力」。「ええ」。「その『のたうちまわる根気』で等身大の学生の生き様、生き方を講義していただきたいのです。身体で感じる社会との関係を他校の大学生に講義してもらうという授業なんです」。「彼女達でいいのですか?」。「はい」。確かに『のたうちまわる根気』は、苦しみもがいて転げ回り、必死にあがき見つけ出す『生き方』。言い換えれば、悩みという心の痛みをいかに解放するかを人生で学ぶこと。また、勇気・元気・根気という『気』を持続させる力を身につけることだ。「君たち、どうする?」。「はい、やりたいです」。そんなわけで『コマンドマイナス ⌘− 』が自分たちよりも先輩で博士課程を目指す他校の学生の前で講師デビューする。来年4月に。みなさん、どう思われます。「驚き、桃の木、山椒の木」ってこういう時に使うんでしょうね。いやはや、人生どう転ぶか分かりませぬぞ…。

sekime collection
大阪の城東区にある『関目(せきめ)』の地名の由来は平安時代にさかのぼる。豊臣秀吉が七曲がりとして城の防備に利用した地で『目で見る関所』が名前のいわれ。『関目』在住の I さんは自分の街の魅力を深く掘り下げようと、街全体のフィールドワークを実施してきました。僕の授業の基本は、観察と想像。研究対象をテーマに最低50以上の観察をフィールドワークのシートに記録せねばなりません。たとえ、研究対象が見つかっていなくともカメラとノートを持ってブラブラと街に出かけてみると、住み慣れた街でさえ、見落としていたものにたくさん気づくはず。いや、観ているようでほとんど観ていないのが現状。歩きながら考え、刺激を受けたところから研究対象を探す身体感覚発想法。今和次郎の『考現学』にみるように現在の社会の何かの現象を一つ取り上げて、深く考察してみることだけでも風俗や文化が浮かび上がってきます。
『関目』の街の観察記録をこまめに収集してきた I さん。『関目』の街全体をミュージアムに見立てその魅力を内外に伝える『気づきミュージアム』にしていくとのこと。その水先案内人にオリジナルなキャラクターを制作することで街の魅力を伝えようと考えているようです。「キャラクターを制作するにあたって、フィールドカードに記録した放置バイクをヒントにデザインしてもいいですか?」「と、いいますと?」「関目の名の由来の『目』に注力して街のロゴマークをデザインしたのですが、放置バイクがなんだか『関目』の日常を見つめているように感じたもので…」。「いいんじゃないでしょうか。ただし、オリジナリティのあるキャラクターに仕上げてくださいね」。「はい」。というわけで粘土で制作したキャラクターをつれて『関目』の街へ。
彼女が制作してきたデザインは、『関目』の魅力を伝える『sekime collection』をテーマにポスターやリーフレットやグッズなど机10台分を超えるボリューム。かなりの気合いの入れようです。彼女にこのプロジェクトで印象的なことはありましたかと、尋ねたところ「キャラクターを連れて街を毎日のように散策していると、何度も出会う子ども達がいて、興味をもってくれたのか、いろいろと『ちょっかい』を出してきました」。『ちょっかい』とは、横合いから干渉したり、たわむれたりすること。「このキャラクターが『関目』のコミュニティー大使になって、いろんな方から『ちょっかい』を出されるようになったらいいな〜」、なんて思うチャーミングなデザインです。

RULE
子ども達と触れ合うことをテーマに『気づきミュージアム』を発想するU君は、ハンディキャップのある子ども達をケアする団体で実際にアシスタントをしています。彼は、公園などの何もない自然の道具(落ちている石や枝や葉っぱなど)を使い、ひとつの楽しい空間を作り上げ、室内に引きこもりがちな子ども達に『外遊び』の楽しさを伝えようと思っているようです。そこで『ルール』を作るというコンセプトをたててきました。つまり『遊び方で遊ぶ』といった発想をすることで、どんどんと想像力が広がり、コミュニケーション力が育つと考えているのです。また、「ルールは、人の行動を縛ってしまうものでありながら、快適に暮らしていくためのコミュニティを築く秩序である」とも位置づけています。キーヴィジュアルは、自然素材を利用した『あみだくじ』。選ぶや、決めるといった『ルール』を象徴するかのようなデザインです。『あみだくじ』に枝を一本加える手は、参加やコミュニティを表すアイコン。ロゴマークの『RULE』も枝で作られていて素朴な遊び心を感じるタイポグラフィ。どこまでもコンセプトを意識した表現が好感を抱くデザインです。そこに、ソフトウェアともいえる『RULE BOOK』を作り、遊び方を見つけだす気づきになるヒントが添えられています。また、サポートするメンバーについても「子ども達の自由な発想を生かしつつ想像力を広げるための接し方が重要である」とプレゼンテーションを進めていきます。社会の課題を見つける。持続可能なプランニングを計画する。プラットフォームをつくるなど、『ソーシャル・サスティナビリティ』に感心が注がれる今、自分の経験しているハンディキャップのある子ども達へのケアの仕事がバックボーンとなった誠実な作品です。

深海魚
研究対象のテーマを『あかり』として、気になる照明器具をたくさん観察してきたFさん。「私、深海魚をテーマに絵を描こうと思うのですが…」。「『あかり』の観察からいきなり深海魚と言われても唐突ですね…」。「そうですよね…。ただ、観察記録を眺めていて、なんか『不思議な生命体』のように見えてきたんです」。「ほう」。「照明器具が深海魚に見えてくるって変ですか?真っ暗な海の中にいる『あかりの深海魚』。私の気づきなんですが…?」。「そうか!観察記録を観て発想をジャンプさせる『見立て気づきミュージアム』か。僕にはない発想のジャンプ。面白いかもしれません。深海魚でやってみましょう!」。「いいんですか?」。「はい」。彼女の見立て方という発想力と表現力でなんらかの気づきに出会えるミュージアム。言葉を超えた造形の言葉による気づき。軽妙で洒脱な今を呼吸するファッショナブルな絵。感性は、持って生まれたもの。彼女の独創性を積極的に受け入れることで何かが開く予感。「ウヒョ〜、たまげた!なんじゃこれ?」という独創性と表現力を身につけて…。そして。「化けろよ!」。とことん潜って誰も見たことのない真っ暗な海へと航海していく潜水艦。そこで真のオリジナリティを探すんだよ。

視点ナビ
フィールドワークを実行して、観察記録をはじめて見せてもらった時からOさんの『気づきミュージアム』のコンセプトは一貫して『視点』。「私たちは物事を一つの視点で見てしまうことが多いように思います。偏った考えは、発想の限界を生むと思うんです」。「はい、その通りですね」。「視点を変えれば世界がひろがる。そこで、フィールドワークで街に出かけるにあたり『人の視点』と『犬の視点』の2つの視点で観察してきました」。「いいですね。『犬の視点』なんて、小津安二郎の世界観ですね」。「はっ?」。「知らないか!『小津調』という独自の映像美を作り上げた映画監督なんだけど…。ロー・ポジションで、カメラを固定して撮影する監督。つねに標準レンズで撮影してたと思うんだけど。反復の多いセリフまわしも特徴で、日本映画界の巨匠だよ」。「知らないです」。「そうなんだ。一度、ネットで調べてみて…」。
こんな会話から始まった彼女とのミーティング。プレゼンテーションでは、観音開きの本のデザインに仕上げ、右ページに『人の視点』、左ページに『犬の視点』と街の見え方が違うことが顕著に表されている。『視点ナビ』と名づけられたネーミング。視点によって世界が大きく変わることへの『気づき』をナビゲーションしてくれる。ヴィジュアルデザインの『気づきミュージアム』の課題で『視点』と決めた段階ですでに「見えてたんだろうな」と思うコンセプトです。
『人の視点』『犬の視点』で映画をつくると面白いだろうな、なんて思わせてくれる作品です。

魔都逢阪 (MATO OSAKA)
Fさんのプレゼンテーションが始まりました。「みなさ〜ん、『逢魔時(おうまがとき)』という言葉をご存知でしょうか?」。「……」。「昔から『何やら怪しいものに出会いそうな不思議な時間』を表す言葉で、黄昏時(たそがれどき)の時間帯を示しています。古来から日本にある民間信仰などを背景に、この時間帯を見えないものと通じる時間と呼んでいたようなんです」。「へぇ〜」。「そこで、この不思議な時間帯を現在の大阪に掛け合わせて『気づきミュージアム』という観光資源にできないかと考えたのです」。「……」。クラスのみんな怪訝な顔をしていて、Fさんの考えがまだ理解できていない様子。「えっと、平たく言うと大阪の魅力を知らせるために街全体を『気づきミュージアム』と捉え、黄昏時の不思議な時間の『逢魔時』をクローズアップした大阪観光へと展開したいの…。路上観察で難波に行った時、ライトが川面に映りとてもファンタジーな感じがしたんです。思わず見とれていたら、まるで吸い込まれるような感じになって魔法にかかったような気持ちになったの…。これって『逢魔時』じゃないかしら?と、急に思えてきたの。そんな目で大阪を見つめると、誰も知らなかった大阪がまだまだあるんじゃないかと…。それで、その時間帯を『大阪』じゃなくて『逢阪』として『魔都逢阪(MATO OSAKA) 』ってネーミングにしたら魅力が倍増するんじゃないかと考えたんです」。「すご〜い。そんな見方をしたことなかったわ」。「出身が大阪じゃない私だから感じるのかしら…。それで、その不思議感をポスターやカタログにして告知するのね。加えて、パスポートや入国受理の印鑑も用意して遊び心満載にしていく計画。ロゴタイプもちょっと怪しげなスクリプト書体にして『逢魔時』を演出するつもりです。大阪の人も、それ以外の人も、このひと時は旅人というわけ…」。なるほど。旅は、気づきの始まりということね。

親子で気づきミュージアム
Hさんの『親子で気づきミュージアム』のプレゼンテーション、何だか楽しそう!「親子で楽しめて、身近な自然に気づいてもらうことを目的としたミュージアムを計画しようと思うのですが…」。「どんなミュージアムなんですか?」「『展示を見る』といった従来の展覧会ではなく、『展示をお客さん自身でつくってもらう』というミュージアムです」。「ワークショップ型なんですね」。「はい。例えば、『空の青』といっても青の色って無限にあるじゃないですか。それなのにクレヨンに青が一つしかなかったりすると全部同じ色になっちゃうでしょ。色が無限にあるということに『気づく』ミュージアムを計画しています」。「素晴らしい!」。「具体的には、雲形に複数の青が刷られたシートを用意して、それを切り抜き、今日の空の色に近い青を探し、日時を書き込んでもらいます。日時や場所で空の色がこんなに違うと記録するシートです」。「なるほど!子ども達が空の色を採集するわけですね」。「それから、別紙に空の写真を用意して、今度はゲーム感覚で今日の空に近い色を探していくんです」。「ほう」。「すると、雲が羊になるというアイデア」。「あっ!これ、羊になるんだ。可愛い〜」。「あと、『葉っぱシート』も用意して実際の葉っぱの緑を豊富な緑の『葉っぱシート』の色から探しだして採集していきます。そして、その採集した『緑』にも日時を書いて実際の葉っぱの近くに展示するのです。いつか、違う日にやって来て、葉っぱの色が変わってたりしたら色の成長が分かるわけ…」。「面白〜い。葉っぱが成長するんじゃなくて、色が成長するって考えね!」。「それから『風車』も親子で作って風を感じてもらいます」。「そうか、見えない風の動きを可視化するのが『風車』ってわけか。風や水で動く造形作家、新宮晋さんが聞いたら大喜びしそうだね」。「はい」。「自然界の色や形を探る『気づきミュージアム』か。簡単にワークショップができて、楽しくて、分かりやすい。世界のどこでもできるアイデアなんだ」。

1/f YURAGI MUSEUM
「このミュージアムの企画は、散歩中の路地裏から始まった」。こんな言葉から始まるSさんの詩的な企画書。「どんな町にもある細い細いどこまで続いているかわからないような路地。家々の隙間をぬうように繋がるそのありふれた空間には、行き交う人々の生活に寄り添い触れ合っている場所だからこそ、不思議な魅力がある。知らない町の路地をふらりと歩くと、日常の中に潜むほのかなきらめきが見えてくる。切り取った空の青さ、吹き抜ける風の音、はしゃぐ子ども達の声、ゆっくり前を行く背中、それぞれの要素が混ざり合い、私にあたたかな記憶を甦らせてくれる」。『1/f YURAGI MUSEUM』。f 分の1 、ゆらぎとは、鼓動のリズム。「f 分の1 、ゆらぎは、人間工学の分野で研究されている『連続だけれど一定ではない変化』を表す言葉です」。「そうですね」。「一定期間内の同じ振動状態の繰り返しを周波数 f で表すことからこう呼ばれています。日常の中に散らばっている空間、時間的変化、小川のせせらぎやそよ風の吹く間隔など人が心地よいと感じる要素は、この f 分の1 と繋がっているとされています。もともと人間の心拍数もこの f 分の1 のリズムを刻んでいるとされるため、少しずつ変わりゆく流れを慈しむことができるのです。この穏やかに変わりゆく『ゆらぎ』をテーマに五感で感じ取れるミュージアムを計画していきたいと考えています」。「ニューサイエンスですね」。ということで、Sさんの『気づきミュージアム』は、色・音・香り・味わい・手触りといった『五感ミュージアム』。
『ゆらぎ』をコンセプトに心象の風景を立体的に可視化しようとしています。また、五感をテーマとしたミュージアムグッズも展開してきました。彼女のふる里の風景がそこに立ち上がっていくかのようです。

TO ME SHOES
「路上観察で切り取った街の風景。それが、もし靴になったとしたら…」。そんな、Kさんの『気づきミュージアム』のコンセプトは、幼い頃に誰しもが一度は考えたことのある『透明人間』。「路上観察で写真を撮っていて、足下を見つめたら草に埋もれる私の靴が…。何かグッズを展開してみたいとぼんやり考えていた発想と子どもの頃によく考えていた『透明人間』が一つに繋がって、『街の風景と同化する靴』なんてできたら面白いかもと思いついたんです」。「面白そうですね。自然の中には、樹木などにまるで同化したかのように擬態する昆虫などもいますものね」。「ええ、靴が透明に見えてきそうで、すごく軽やかに歩けそうに思えるんです」。「そうですね」。「そこで、今回の路上観察で見つけたなにげない風景の写真を使って靴を作り、その風景になじませて展示してみるというアイデアを思いついたのですが…」。「いいんじゃないですか」。「それと、靴をキット化し、好きな写真を取り込んでプリントするだけで自由にオリジナルな靴が作れるようにすれば、販売も可能になります」。「なるほど」。「それと、ネーミングなんですが、『TO ME SHOES=透明シューズ』なんてどうかなと思っているんですが…」。「洒落が効いてますね」。この展開、『擬態する靴』から『擬態する身体』へと発想すれば、もっともっと広がりが出て面白くなっていくように思える。擬態は、生物やヒトが、その色彩や形また行動によって周囲の環境と容易に見分けがつかないような効果を上げること。進化系図の最先端にいる昆虫たちが驚くほど多様で独創的にデザインされていることなどにも注目してみると靴にとどまらず、衣服へ空間へと繋がっていくように思うのだが…。

き になる き
写実的なイラストの得意なHさんが注目したのは、都市と自然。「私、いま、大阪市内に住んでいるんですが、乱立するビルの中で静かに佇む樹木に興味を持ちました。路上観察で木ばかりに注目して観察していたら切り株が顔に見えてきたんです」。「なるほど」。「そのうち木と会話している気分になって、木が『もっと、自然が多い中で暮らしたいなぁ。都会の空気はおいしくないなぁ』なんて言っているように思えたんです」。「ええ」。「それで、3本の木による物語をつくり絵本にしようと思っています」。「ほう」。「タイトルは、全部ひらがなで『き になる き』」。「ひらがなですか?」「はい。漢字だと『木になる木』『木になる気』『気になる木』『気になる気』といずれかに限定されてしまうでしょ」。「なるほど」。「ひらがなにして発想することで自分の中に気づきが生まれるように思うんです。もちろん、読者の方にだって…」。「そうか、『木好きの気づき』だね」。

ノスタルジーレター
ローカリティとノスタルジーがコンセプトの I さん。「私、昭和が好きなんです」。「はぁ」。「私、八尾って所に住んでいて、まだまだ懐かしい昭和が街のいたるところにあるんです」。「ええ」。「自分の住んでる街だからかもしれないのですが、懐かしい・あたたかい・せつないといった『ノスタルジー』が街にあって、においがあるというかテイストがあるんです」。「ローカリティですね」。「それで、八尾で撮った路上観察をもとに電子メールがまだ使われていなかった昔の手紙に注目してデザインをしたいと思うのです」。「どんなデザインですか?」。「それぞれの昭和を感じる写真の一部を切り取り、封筒に穴を開け時間や空間がトリップしていくような状況を作り出せないかと思っているんです。つまり、八尾の持つ街の醸し出す気配を届ける『気づきミュージアム』なんです」。「あっ、先生、八尾って知ってますか?」。「知ってるよ。『八尾の朝吉』やろ」。「はぁ」。「君、八尾に住んでて『八尾の朝吉』知らんのか?大映映画の『悪名』シリーズで勝新太郎ふんする『八尾の朝吉』と田宮二郎ふんする『清次』のバリバリ河内弁の任侠アクションで大ヒット作やないか。まさに、これぞ、八尾の昭和やないか…」。「先生、私、平成生まれやからそんな知りません」だって。


きづき博物館
「樹の木目がなんとなく笑っているような顔に見えたりしませんか?車のヘッド部分が怒っているように見えることってありませんか?。何の変哲もないものが顔に見えてしまった経験ってありませんか?」。こんな説明から始まったNさんのプレゼンテーションは『顔に見える街の風景』の『きづき博物館』。誰もが一度は、そんな経験があるはず。一度、顔に見え始めると何もかもが顔に見えてくる。「今回の路上観察で街を散策してたら、いたるところに顔が潜んでいるんです。時に笑っていたり、怒っていたり、泣いていたりもします。トボケた顔やチャーミングな顔にも出会いました。いろんな表情の顔を探していると、なんだか街がすごく賑やかに感じられ、話しかけられているようにすら思えてきたのです」。クラスの中から「ある、ある」と共感の声がとびます。「そこで、そんな顔たちの展示をすると同時に路上観察で私に話しかけてきた顔たちの物語を絵本にしてみようと思いました。加えて、エコバックなどミュージアムグッズもたくさん作ってきました」。「可愛い〜」という声が聞こえてきます。
Nさんの路上観察、街でユニークな顔を見つける度に、きっと「クスッ」と微笑みながらシャッターをきったように思えます。それにしても、街にこんなに顔があるのかと感心するぐらいの『顔づくし』。彼女のプレゼンテーションが終了してすぐに、誰かが「ここにも顔があるよ!」という笑い声…。『顔に見える街の風景』というような子ども達とのワークショップにも展開できそうな楽しいアイデアです。



アウトサイド!
Tさんが路上観察で採集してきたのは、大阪、京都、神戸などの看板類。「とりあえず、いろんな看板を収集してはみたものの…。『気づきミュージアム』という発想に上手くつながりません」。「ちょっと暗礁に乗り上げているようですね。少し雑談をしてみましょうか」。「はっ、はい」。「今一番興味のあることだとか、得意なことだとか、趣味とか、些細なことから話していきませんか?」。「私、女子校出身でずっと演劇をやってたんです。ちなみに演劇歴9年なんです」。「へぇ〜。今もこの大学で演劇部に所属してるんですか」。「いいえ」。「僕は、演劇について詳しくないんだけど先日あるミュージアムでワークショップ形式の演劇を見たんですよ。それが、観客から出る複数のキーワードから即興で演劇をしてて感動したのですがTさんの演劇ってどんなものですか?」「シェイクスピアのロミオとジュリエットだったり、アルベール・カミュのカリギュラとかいろいろですね」。「うへ〜、すごい。本格的じゃない」。「はっ、はい」。「例えば、さっきの僕が感動した劇のように君の集めた観察記録から観客にキーワードをもらい即興で演劇をしたとしたら、そこに何らかの気づきが生まれたりするんじゃないだろうか?」「えぇ、でもこれってグラフィックの授業じゃないですか」。「そうですよ。クリエイティブの領域を横断的に捉えてそこにコミュニケーションが生まれて見る側に『ほぅ〜、なるほど』とか『へぇ〜そうか』なんて心が動けば『気づきミュージアム』になるじゃない。告知のツールやチケットなど全て通してつくればグラフィックにもなるよ」。「なるほど。演劇でプレゼンしていいんですか」。「もちろんいいよ」。「昔の演劇仲間はみんな違う大学なんですが…」。「集まれる人だけでもいいじゃないですか」。「わぁ〜、それじゃ早速みんなに連絡してみま〜す」。



劇団ドリュジラの外部公演、『アウトサイド!』。みなさん、いかがでしたでしょうか。アドリブ演劇は不慣れだといってましたがユニークでしたでしょ。ちょっと、吉本新喜劇的な感もありましたが、楽しんでいただけたでしょうか。Tさん以外の劇団員は、大阪市立大学、関西学院大学、同志社大学の3校の学生達。ほんとみんなよくやりますよね。
さて、三木組奮闘記の年末ドキュメントスペシャル版におつきあいをいただきありがとうございました。この長〜いコラムを13回に分けて2週間連続レポートなんて事も考えてみたのですが、なんとしても2011年中にアップすると『コマンドマイナス ⌘ー』の相方(隣のクラスのSさん)と約束をしていたので、師走の一気書きにてアップさせていただきました。年末のお忙しい時に長文のコラムで失礼いたしました。文字数を調べてみたらなんと12,000文字をはるかに超えているではないですか。原稿用紙にして30枚以上も書いちゃいました。
いま、やっと書き終え「ホッ」としたところで、今年の三木健デザイン事務所の業務は終了。2012年は、1月6日(金)より仕事を始めさせていただきます。今年一年、お世話になったみなさま本当にありがとうございました。良いお年をお迎えください。

話す建築:クリエーションと道草



中之島デザインミュージアム de sign de > で開催されている「KANSAI 6 EXHIBITION IN OSAKA ONOMATOPOEIA つながる建築・ひらかれる言葉」の「KANSAI 6 – RELAY TALK 」のトリとして竹山聖さん(建築家)と明日12月22日(木)午後7時より対談します。『オノマトペ』を起点に「建築やデザイン」の話をするつもり。そのテーマは、最近、竹山さんがTwitterでツイートしていた『オノマトペ道草つぶやき』を僕が勝手に抜粋、そこに問答をするように僕の言葉を添えて対談のコンテンツとしました。下の図の上の言葉が竹山さん。下の言葉が僕。対談のタイトルは『話す建築:クリエーションと道草』。感触や感動といった五感や脳の話。ココとソコで異なる時間や空間や人間の話。見えると見えないの存在や状態の話。言葉にならない言葉の話。のたうちまわりながらクリエイティブを続けてきた僕たちの赤裸々な話。そして、「世界に出会う驚きと喜び」といった気づきの話もするつもり。変化球あり、直球あり、隠し球あり。建築と最も遠い話が建築に繋がっていくという『話す建築』。道草建築家の竹山聖さんとの対談。専門家はもちろん、一般の方もワクワクするような「プチ哲学と建築とデザイン」の話。ここでしか聞けない本音の話もUSTを流さないのでやるかもよ(笑)。みなさん、どうぞお越しくださいね。というか、トークに参加してクリエイティブの道草にご一緒しませんか。


KANSAI 6 – RELAY TALK 6 「話す建築」
対談:竹山聖(建築家)× 三木健(グラフィックデザイナー)
2011年12月22日(木)
開始:午後7時
参加費 :¥2,000(開催当日の観覧料含む)
定員:60名(要事前予約)
会場:中之島デザインミュージアム de sign de >
   大阪市北区中之島5-3-56 中之島バンクスEAST
主催:中之島デザインミュージアム de sign de >
http://www.designde.jp



KANSAI 6 EXHIBITION IN OSAKA 2011 / ONOMATOPOEIA

中之島デザインミュージアム de sign de > で開催されている『KANSAI 6大阪展―つながる建築・ひらかれる言葉』は、遠藤秀平、李暎一、宮本佳明、長坂大、竹山聖、米田明の6名による建築展。韓国での展覧会を皮切りにアジアの国々を巡回する企画。その日本展が12月25日まで開催されています。いずれの建築家も国内外で活躍する個性豊かな建築をつくる人たちです。言い方を変えれば6人6様。作風も建築思想もそれぞれ異なります。そこで、グルグルやジワジワといった『オノマトペ』を通して6人の作風や建築思想を語るコンテンツにすることになったらしいのです。彼らの建築をオノマトペで比喩してみると、遠藤さんがGURU GRU、李さんがMAZE MAZE、宮本さんがGUI GUI、長坂さんがJIWA JIWA、竹山さんがZIG ZAG、米田さんがGUN GUN。このオノマトペ、建築家自身が建築コンセプトにそって決めたもの。解釈は人それぞれなのでしょうが、僕は見事に言い当てているように思えるのです。オノマトペ(onomatopoeia)の語源はギリシャ語。onomaという語は「名前」の意味。poeiaの語は「作る」を意味していて「名前を作る」が原義です。もともと読みのない音に字句を創りだしたことに由来しています。「擬音語」は、自然界の音に字句を当てたものです。風がヒューヒュー。水がサラサラ。犬がワンワン。といったように世界中で使われています。ちなみに英語では犬は「BOW WOU」。日本人とは音のとらえ方が少し違います。「擬態語」は、状態や身振り、心情を音で表したものです。面白すぎてケラケラ。腹が立ってムカムカ。大きな男がノシノシ。老人がヨボヨボなど、特に日本人が多く使う表現だそうです。この「擬音語」と「擬態語」の総称を『擬声語(=オノマトペ)』といいます。オノマトぺは、決して理性的な言葉ではありませんが、身体性や情緒性や空間性が潜んでいて直感的にその映像が浮かんできます。つまり、音により素早く可視化する力が潜んでいると思えるのです。気配が伝わる。状況が理解できる。身体的で直感力のあるコミュニケーション手段だと位置づけることができるのではないでしょうか。その6人からご指名をいただき僕がポスターやサインなど、この展覧会の一連のアートディレクションを仰せつかることになったのです。いざ打ち合わせが始まると、何か一つの議論に喧々囂々。それぞれが考え方も美意識も違う。展示パネル一つをとっても自分達のスタイルで準備してくるのでみんなバラバラ。事務局はあたふた。「いやはや、『頭のいい、わがままな図工大好き少年がそのまま年を重ねたようなおじさん』というのが僕の彼らに対する印象」(笑)。力のある建築家でも、こと自分で自分の作品を編集するとなると客観性が弱くなるのか、グループ展なので競い合う意識が高まり主張が強くなるのか、『木を見て森を見ず』の状態。「僕も反対の立場ならきっとそうなるだろうな~」なんて想像しながらも、ここは編集者の視点をしっかり持って個と全体をいかした展覧会にしなければ!と、強い意気込みで彼らと向き合います。僕が最初に取りかかったのは、それぞれの建築コンセプトを読み取りながら『オノマトペ・ロゴタイプ』を作ること。そして、そのコンセプトやオノマトペの擬態性をイメージして『オノマトペ・ロゴタイプ』に命を注ぎ、人の動作に反応するインタラクティブな文字の生命体を作り出したいと考えたのです。つまり6人の建築家をメタファーするような『情報の建築』を会場入り口にある階段吹き抜けの壁に作り出そうと思ったのです。映像はアート・デザインユニット『softpad』とのコラボレーション。その階段を上がると観客を出迎える展覧会の情報があるのです。そのデザインは、白い壁に『白い文字』。弱く静かな壁は、能動的に情報を読み取りにいかなければならないぐらい繊細なデザインにすることで、強く主張する6人の建築家の模型や思想を際立たせることにしました。本当のことをいうと、設営の数日前までは黒の文字にすることに疑いすらもっていなかったのです。しかし、建築家の主張が強まるにつれフラジャイルな空間にすることで生命の宿ったオノマトペが引き立ち、その吹き抜けがそれぞれの建築家の個性に出会うためのイニシエーションの空間となっていくのではないかと発想したのです。極めて弱い情報に目を凝らすように近づく人々を想像する。それは、『陰翳礼讃』の世界観を『白の白』で表現してみようと考えた結果なのです。「弱く、もろく、壊れそうな壁の情報が透明な光になって6人の建築家を照らすことになってくれればいいな」と思っています。この展覧会6人の建築家が対談するリレートークと建築史家の倉方俊輔さんが塾長となる4回シリーズの倉方塾もあって見所満載。僕も竹山聖さんと12月22日に「話す建築」というタイトルで対談します。ZIG ZAGの建築が「ペチャクチャ」と話しだすかもしれません。みんなと「ペチャクチャ」そんなにぎわいのある話が出来ればと思っています。



KANSAI 6 EXHIBITION IN OSAKA |ONOMATOPOEIA|
つながる建築・ひらかれる言葉

EXHIBITION1 オノマトペの建築
EXHIBITION2 S=1:10―建築家建売住宅展示場
会 期 2011年11月26日(土)~12月25日(日)
開館時間 12:00~19:00/月曜休館
観覧料 ¥500(中学生以下無料)
会場:中之島デザインミュージアム de sign de >
大阪市北区中之島5-3-56 中之島バンクスEAST
Phone.06-6444-4704 Email:info@designde.jp
http://www.designde.jp



白くまツリー

『 ユニセフ祈りのツリーproject』に参加しています。
震災後、はじめて迎えるクリスマスに「もう一度、被災地の子どもたちのことを思うきっかけをつくろう」という呼びかけにデザイナーや学生など2,000人以上の人が参加。クリスマスツリーのオーナメントをデザインして被災した子どもたちに少しでも喜んでもらったり、ビックツリーにして多くの人にこの悲惨な震災を忘れないでもらおうという運動です。参加者が、同じデザインのオーナメントを三つ制作して、一つは東京の有楽町で『祈りのビックツリー』を作る。もう一つは、被災地の幼稚園や保育園などに届けて子どもたちに楽しんでもらう。そして、残りの一つをチャリティー販売するという計画。些細なことだけどデザインを通して少しでも社会に役立てばと考え参加することに。僕とスタッフが一緒に作ったのが、柔らかなファーの『白くまツリー』。ふわふわの布で触れるとあったか…。この『白くまツリー』をGIFアニメで動かして、この場で勇気・元気・根気を届ける 三つの気(=木)の3Treesダンスをご披露。みんなのデザインしたオーナメントが集まって、被災地への大きな祈りになるといいな〜。そして、子どもたちが心の底から微笑む日がはやくやって来ますように…。

http://inoritree.com/







日いずる国

2つのチャリティ企画に参加しています。いずれも、3月11日の東日本大震災の復興への願いを込めて企画されたものです。1つ目は、クリエイションギャラリーG8とガーディアン・ガーデンによる企画で、被災地4県の染め物業を営む職人さん達と共に、伝統的な「印染(しるしぞめ)」で作るトートバッグのプロジェクトです。「印染」とは、大漁旗や袢天(はんてん)など、文字や図案をオーダーメイドによって、ひとつひとつ仕上げる染物。被災した岩手・宮城・福島・茨城4県の日本有数の漁港では、これまで海の安全と豊漁を祈願して大漁旗が色鮮やかにはためいていました。しかし、今回の大震災により大きなダメージを受けてしまいました。そこで、地元の産業を応援すると共に、トートバックの販売収益の全てを被災地へ義援金として寄付する展覧会のプロジェクトが立ち上がりました。2つ目は、僕が所属している日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)のグラフィックデザイナー586名が参加するハンカチのチャリティ展覧会です。この企画は、来場者が1枚購入するごとにハンカチが1枚、被災地の子供たちに届く仕組み。デザインで世界を少しやさしくする発想です。この2つのチャリティ企画で僕がイメージしたのは、トートバックとハンカチを一つの物語で繋ぐアイデア。みなさん、下にあるトートバックの正方形と三角形を組み合わせた『図』、なんだかわかりますか?『日本』という漢字が『地』の部分に潜んでいるでしょ。『地と図』の関係を利用したデザイン。見方によれば柔道などの『一本』とも読めます。「一本、日本」「がんばれ日本」というエールを込めたデザイン。内側のポケットには『赤い日の丸』。そして、そのポケットの中に『微笑むJAPAN』のハンカチが入っている。「世界が微笑む日本になろう!」という想いを込めて…。『日いずる国』日本がはやく健康な笑顔になりますように…。



CREATION Project 2011東日本の職人と180人のクリエイターがつくる印染トートバッグ展
2011年11月24日(木)~ 12月22日(木)
11:00a.m.-7:00p.m. 日曜・祝日休館 入場無料
http://rcc.recruit.co.jp/co/exhibition/co_nen_201111/co_nen_201111.html

JAGDA東北復興支援チャリティ やさしいハンカチ展
http://www.jagda.org/information/jagda/1165