KenMiki & Associates

三木組奮闘記[気づきミュージアム]

後期の授業が始まりました。僕の授業は、15週で学生が「ガラッ」と入れ替わる選択科目。夏休み最後の土曜日に前期の学生達を僕の事務所に招待して『三木組卒業式』という名の茶話会を開いたのが9月10日。翌週の17日は『三木組入学式』という名の初授業。またまた始まりました三木組奮闘記。楽しくやるよ。みんながんばってね!
それでは課題の説明。今回の課題は、『気づきミュージアム』です。『観察力』と『想像力』を活かして『デザイン力』を身につける課題です。町に出かけ路上観察を行ってください。いつもの見慣れた風景に目を凝らして、気になるモノやコトを採集してください。最低でも一つのテーマで50以上。規定の『フィールドカード』に記録してください。その観察した素材を元にあなたのユニークな想像力で『気づきミュージアム』の企画とデザインを考えてください。考え方の参考に事例をあげます。

事例1
アスファルトのすき間やコンクリートの割れ目に生える雑草や苔ばかりを記録して『町中雑草庭園』と名づけてみます。あなたの観察力と想像力で町で目にする雑草を庭園と見立てたとします。大きな地図に採集した場所を示し、それぞれの写真を巨大に拡大して展示。観客はガリバーになったつもりで会場を観覧。告知ツールのポスターは、苔をコラージュしたタイポグラフィで表現。チケットは、道路の写真に草のカタチが切り抜かれた平面でありながら立体感のあるデザイン。ミュージアムグッズや作品集も採集した雑草でデザイン。ミュージアムCafeのメニューは、摘み草サラダを期間限定で準備。このように路上観察で発見したモノやコトをあなたの想像力でデザインへと繋げてください。

事例2
『文字』をテーマに路上観察に出かけてみる。くるくると巻かれたホースがアルファベットの『O』の形に見えてきたとします。すると工事現場の脚立が『A』に見えてくる。あなたの想像力を活かして路上観察をしながら『A』から『Z』までを採集してみる。それを拡大して展示。ミュージアムグッズや作品集にも展開して販売。また、それらのアルファベットで文字を組む。展覧会のツールやサインは全てその文字を使用する。何だか楽しそうに思えませんか。『気づきミュージアム』にやってきた人が「あっ!」とか「ほぉー」と感心する展覧会を企画してください。ミュージアムのアクティビティ(活動)を想定しながらデザインへと仕上げてください。

1. Exhibition 展覧会(気づく・感じる)
2. Education 教育(学ぶ・育てる)
3. Design 商品開発(作る・売る)
4. Society 交流(語る・繋がる)
5. Publication 出版(伝える・広げる)

『気づく・感じる・学ぶ・育てる・作る・売る・語る・繋がる・伝える・広げる』。「ほらっ!」動詞で考えてみるとミュージアムの活動領域が動いて見えるよ。あなたの『気づき』で心が動く。そんな提案を期待してますね!

三木組卒業式


夏休み最後の土曜日に三木組『前期』の学生達を事務所に招待して『三木組卒業式』と銘打って茶話会を開催しました。茶話会といってもアルコールも準備したので結局は飲み会になってしまったのですが…。ちなみに、僕の授業は選択制で、『前期・後期』と15週で学生が入れ替わります。グラフィックデザイン学科の3回生を対象に『コミュニケーションデザインとは何か?』について研究しています。言い換えれば、「伝わる・気づく・感じるといった人の心に響くデザインって何?」と自らが問い続けることで、『コミュニケーションデザインにおけるおもてなし』を学ぶ授業なんです。「『おもてなし』ですか?」なんて声が聞こえてきそうですが、「そう、『おもてなし』なんです」。『茶の湯』の世界に『利休七則』ってあるのをご存知ですか?

一、茶は服のよきように点て
「服」とは、飲むこと。飲む人にとって「調度良い加減」に茶を点てること。「その時、その場所での客の気持ちを察して、よく考えて」と説いています。ただし、これは単に客の好みに合わせなさいといっているのではありません。
[相手の気持ちや状況を考える]

二、炭は湯の沸くように置き
ここでいう「置き」とは、「湯の沸くよう」にするための行為全体を表しています。釜の湯の沸く音を聞き、点前にかなった湯の熱さ加減を知ること。その加減の源となるのが炭。点茶における準備の重要性を説いています。
[本質を見極め、段取りをしっかり組む]

三、花は野にあるように
ここで注意しなければならないのが、「あるように」ということ。「あるままに」ではないのです。野に咲いていた花を感じさせるような生け方を表す言葉で、ただ写真に撮って「あるままに」を再現するのとは違うと説いています。つまり、野に何輪もの花が咲いていたとしても、一輪でそれが表現出来れば「あるように」といえるのです。余計なものを省く程、受け手の想像にふくらみが生まれていくのです。
[表現は、本質を知り、より簡潔に]

四、夏は涼しく冬暖かに
色や音などを使った感性を振るわす演出で『夏は涼しく冬暖かに』を表現してみる。『見立て』を介して、もてなす側と受ける側の知性と感性を刺激し合う。そこに深いコミュニケーションが育まれていくと説いています。
[もてなしは、相手を想う心で]

五、刻限は早めに
これは、単に時間厳守を説いているのではありません。いかなる場合でも、現実の時間よりも自分のイメージの時間が常に先行していれば、その時差が心の余裕となって平常心でいれると説いています。
[ゆとりを持って人に接する]

六、降らずとも傘の用意
「備えあれば憂い無し」とは少し意味が異なります。「憂い」とは自分自身の心配。 ここでは、招く客の立場になり、相手に「憂い」を持たせないために不測の事態を想定しておくと説いています。
[万人の憂いを想定して備える]

七、相客に心せよ
同席した客に気配りをしなさいということです。お互いに気遣い、思いやる心を持つように、と説いています。 これこそが、『茶の湯』の真髄といえる言葉。
[一期一会、無垢な心で]

といったわけで、「『利休七則』は、コミュニケーションデザインに繋がるでしょ!」。この『コミュニケーションデザインの極意』を三木組卒業式で感じてもらおうと、三木健デザイン事務所のスタッフ全員でおもてなしの準備です。午前中から2時間かけてお掃除して、買い出し。手作りでお料理を準備して、サプライズゲストにアコーディオン奏者のAZ CATALPA(アズ カタルーパ)に来てもらい歌ってもらう。はじめて彼女の歌声を聞いたのは、1ヶ月ちょっと前。プロダクト・空間デザイナーの柳原照弘さんのスタッフDavidがスイスに帰るお別れパーティーの日。アコースティックな音色が心にしみて涙が出そうになったんです。この感覚を三木組のみんなにも伝えたいと咄嗟に想い、その場で交渉。気持ちよく承諾してくれて、三木組卒業式のサプライズゲストとしてお迎えしたのです。三木組のみんな、楽しんでくれましたか。遊びも仕事も一生懸命だよ。そんなわけで三木健デザイン事務所では、『おもてなし』テストが今後の採用試験に入りま〜す。(笑)