KenMiki & Associates

働く

3年前にさかのぼる。
時間を逆行して2005年10月23日にタイムトリップしてみます。「日」でいうと、うるう年が一日加算されて1096日前。「時間」でいうと26,304時間前。「分」でいうと1,578,240分前まで戻ってみます。実は3年前の今日、今の事務所に引っ越した日なんです。つい最近、戸棚の奥から当時、定点で回していたビデオが出てきたので、2日間の引っ越しの様子を約1分の早回しでまとめてみました。物が出来上がっていくプロセスがなんだかおもしろかったので、みなさんにもご覧いただこうと思った次第です。何もない空間に物が運ばれ、組立てられる。そして仕事場が完成する。いったりきたりする思考のプロセスとは、ちょっと違いますが、体を動かした分だけ着実に作業が進んでいくのが、ゴールに近づいていくようで嬉しくなります。意味など求めないで僕の事務所の1,578,240分前にタイムトリップして、約1分間の大慌ての引っ越しにお付き合いください。働き蟻が走り回っているようにすごい勢いです。「働く」ということがまさに「人」が「動く」ことなんだと、あらためて気づかされる映像です。

ダーウィン

ダーウィンの生誕200年で自然科学に注目が集まっています。みなさんご存知の進化論。ダーウィンは『種の起源』という著書の中で、自然選択・生存競争・適者生存などの複数の要因により「常に環境に適応するように種が分岐し、多様な種が生じる」と説明しています。つまるところ、生物は不変のものではなく長期間をかけて次第に進化しており、その変化の中で生まれてきたものであると説いています。いわば、さまざまな生物の進化は、過酷な自然の中で淘汰された「生命のデザイン」と見てとれるように思います。さて、ここに紹介する葉書サイズのカードとポスターは、ダーウィンの進化論をテーマに僕がデザインした最新作。ダーウィンの研究対象になった生物を中心に一本の抑揚のあるラインで仕上げたものです。カードは、ダーウィンが世界を旅した測量船ビーグル号を加えて 12枚で一組。もしも、地球に関する何らかの要因が少しでも変わっていたら、生物は私たちが出会ったことのない神秘な進化のプロセスをたどっていたかも知れません。あなたの想像力を膨らませてこのカードを自由に並べ替えてみて下さい。独自の進化のプロセスを想像すると、思わぬ物語へと広がっていきます。あなたの遺伝子を持った未知な生命が、遠い将来どこかで進化を果たしているかもしれません。
おっと、その頃、地球は存在しているのでしょうか。

CAFE

いま、多くの人が心や体がうれしい納得できる商品やサービスを選ぼうとしています。食品の素材や産地にこだわるのも、その一つ。そして、心のこもっていない過度なサービスを避け、自分のリズムで過ごせる「気持ちのいい空間」を求めています。
今日、京都駅の八条口にオープンしたマールブランシュCAFE。僕がお手伝いした最新の仕事。インテリアデザインは、辻村久信さん。京都ならではの「優雅さと合理性」とでもいうか、駅中にあるカフェとして無駄を省いたシンプルなサービスで自分のリズムで過ごせる、いごこちのいい空間を目指しています。壁にかけられたヴィジュアルには、このカフェのおもてなしの心やサービスが語られていて、布地に絵を染め、文字部分に刺繍を施し、素材感や手作り感にこだわった仕上げになっています。また、手ぬぐい・あづま袋・巾着袋といった京都ならではのグッズもデザインしました。
おいしさにこだわり、いごこちにこだわり、人それぞれのリズムを大切にする。そんな新しい京都スタイルのカジュアルなカフェ、お近くに行かれた時に一度のぞいてみて下さい。
お茶を一服、お菓子でほっこり。

トイレ

事務所のトイレに身長2cmの小さなフィギュアが置いてあります。男性が小用をたそうとすると、目の前のタンクの上からちょうど大事な辺りを双眼鏡で覗いているんです。初めて来られたお客さんがトイレに入られると、何となくニヤッとした顔で出てこられます。緊張する打ち合わせに、ちょっとしたユーモアが雰囲気をなごませます。
そういえば、最近よく公衆トイレの男性用便器に貼付けられた小さな標的。これを目がけて用をたすことで便器周辺の汚れが少なくなるそうです。アムステルダム空港のトイレの「ハエの標的」がとても洒落ていますが、標的目がけて一気に発射ということなんでしょう。
これぞ、「行為のデザイン」。
機能性を高めるのもひとつのデザインですが、コミュニケーションの流れを良くするのもデザインの役目。事務所のトイレの身長2cmの小さなフィギュア、カラダとココロの新陳代謝をよくする「緩和のデザイン」といったところでしょうか。