KenMiki & Associates

正しいボタンのかけ違い方

中之島デザインミュージアム de sign de > の『野井成正の表現ー外から内へ/内から外へ』の『気づき場』で開催されているトークショーの第5回目は、橋本健二さんと服部滋樹さんと原田祐馬さんの鼎談。50代、40代、30代の三世代が60代の野井さんとの関わりから、暮らしや哲学まで「人とデザイン」について語る2時間。題して『正しいボタンのかけ違い方』。何だか演劇でも始まりそうな楽しいタイトルにちょっとワクワクしてきます。
それでは、3名の登場人物をご紹介します。橋本さんは、明治の初期に建てられた小学校を部分移築し資材置き場として使っていた空間を自らの事務所に改築。その空間に時々開店する『BAR橋本工務点』で日本商環境設計家協会のデザイン大賞を受賞された方。建築家でありながらミュージシャン、古き良き時代のアメ車をこよなく愛する方。残すべきモノと残さないモノをしっかり見つめるロン毛のおじさん役で登場。続いて服部さんは、プロダクト・スペース・コミュニケーションのデザインを基軸にアートから食に至るまで「暮らしを豊かにするコトづくり」を実践する『graf』を率いるクリエイティブディレクター。最近は、用途や役割を限定せず使い手の自由な発想に委ねる家具『TROPE』を発表し、ダンサーとのコラボレーションで身体と家具の関係について興味を持たれている方。丸い黒ぶち眼鏡にあごひげを蓄えたファシリテーター役で登場。原田さんは、ブックデザインや展覧会のサイン計画など数多くのアートシーンで活躍するデザイナー。その一方で、大阪でも東京でもない世界の東に位置する日本に「国際基準のデザインを…」と呼びかける『DESIGNEAST』を仲間と一緒に立ち上げられた方。少年のような表情の奥にある鋭い視線で社会とデザインの接点を見つめ、まずは状況を作り出すことでデザインを始めようとするグランドデザイナーの役で登場。ジェネレーションを超えて飛び交うデザイン談義は、きっとアドリブがいっぱい飛び出すはず。デザインエンターテイナーの3名の舞台、現場でないと味わえない状況がつくり出され歓喜の渦に包まれると思います。洒脱な感覚の軽妙なトーク『正しいボタンのかけ違い方』。乞うご期待。



中之島デザインミュージアム de sign de > talk
正しいボタンのかけ違い方
橋本健二(建築家)× 服部滋樹(クリエイティブディレクター)× 原田祐馬(デザイナー)
2011年6月3日(金)18:00-20:00(参加受付は17:30から)
参加費:1,000円/1ドリンク付き
定員:40名
会場:中之島デザインミュージアム de sign de >
大阪市北区中之島5-3-56 中之島バンクスEAST
Phone.06-6444-4704 Email:info@designde.jp http://www.designde.jp

気づきに気づく

中之島デザインミュージアム de sign de > の『野井成正の表現ー外から内へ/内から外へ』の『気づき場』で開催されているトークショーの第4回目は、服部滋樹さんと僕の対談。野井さんの空間『気づき場』で『気づきに気づく』という話をする予定。
「どうして予定かって?」。服部さんとの対談は、ジャズセッションのように空気を読みながらアドリブで進んでいくからです。
服部さんは、いつも僕の言葉を「フワッ」とキャッチして軽くパスを出してくれる。僕が「ピョン」とジャンプするタイミングを計ってのパスです。ぼんやりしてて、そのパスを受け損なうこともありますが、そんな時でも彼は僕のポロした言葉を上手く拾って次へパス。時々、観客にパスを出したりもします。手元がゆるんで自分もポロをすることがあっても、それがまた観客の心を掴んで離さないのです。相手の言葉を生き生きとさせていくパスの名手です。つまりコミュニケーションの『間(ま)』を見つけだす天才なんです。話す人、聞く人の脳の「すき間」を活性化させる服部さんは、「人間」や「時間」を包み込む暮らしという「空間」をデザインする才能に長けたクリエイターです。そんな訳で、彼との対談ポスターは、『気づきの間(ま)』をデザインすることに…。そして、服部さん率いるgrafが生み出す『上質な暮らしの間(ま)』に似合う「どこかなつかしくて、それでいて今の時代の新鮮な空気を運んでくれる」ポスターを模索したのです。赤と青の反対色を選んだのも、モダンデザインの夜明けの時代のような、何かに突き動かされる「ときめき感」をメッセージしたいと思ったから…。
服部滋樹(気)と三木(気)健の『気づきに気づく』対談。ライブでしか味わえない言葉のキャッチボール。時々、みなさんにもパスを出して楽しいトークショーにするつもり。5月27日(金)の午後6時30分。野井さんの『気づき場』でお待ちします。


中之島デザインミュージアム de sign de > talk
気づきに気づく[日常編]
服部滋樹(クリエイティブディレクター)× 三木健(グラフィックデザイナー)
2011年5月27日(金)18:30-20:30(参加受付は18:00から)
参加費:1,000円/1ドリンク付き
定員:40名
会場:中之島デザインミュージアム de sign de >
大阪市北区中之島5-3-56 中之島バンクスEAST
Phone.06-6444-4704 Email:info@designde.jp http://www.designde.jp

言葉は言霊。

メルボルンで開催されたagIdeas 2011にスピーカーとして招聘されたのが半年前。海外での講演は何度か経験してきましたが、通訳がいないのは今回がはじめて。5月4日の午後から40分間のスピーチを無事終了しました。多くのデザイナーがユーモアたっぷりに自らの作品を紹介していきます。そんな中、僕はこの度の東日本大震災の話からはじめ、デザインの思想や哲学など持ち時間の3分の1を理念の話に使います。15分を過ぎる頃まで自分の仕事は一切登場しません。スピーチそのものをデザインすると決めて練りに練って組立ててきました。英訳のテロップも出来る限り簡潔にしてデザインの跡が見ないようにデザインしてきました。日本語と英語を交えてのスピーチです。多くのスピーカーが早口で捲し立ててくる中 、僕はゆっくり、さらにゆっくりと心がけます。「話すようにデザインをする」という僕の考え方を体現させる組み立てです。話し始めて数分、会場から拍手が沸きました。スピーカーにとってこれほどの支えはありません。メルボルン到着後、逐次通訳をつけるつけないで大もめしたのが嘘のようです。後半の作品を紹介する頃には、会場の真剣な眼差しが肌で感じとれます。スタッフ総掛かりで組立てたスピーチのデザイン。まさに『話すデザイン』のプレゼンテーションです。40分の持ち時間、数秒のずれで話を終了。控え室に戻るとチェアマンのKen Catoが「ファンタスティック!あなたの講演が始まるや否やこの騒がしかった控え室が40分間静かになった」と僕を抱きしめてくれます。そして、この部屋にいたスピーカーの全員が集まってきてくれます。会場にいたスピーカーもわざわざ戻ってくれて「コングラチュレーション!」。メルボルンの講演、無事終了です。オーストラリアの人たちに間違いなく伝わったと思います。多くの人から「複雑に構成されたミニマル」「哲学が詩的に伝わってきた」「涙が出てきた」とお褒めの言葉をいただきました。言葉は言霊。自分を信じて通訳なしでやって本当に良かった。事務所のみんなありがとう!


RELAYING HAPPINESS

メルボルンで開催されているagIdeasの初日は、子ども達に「グッドデザインとは何か?」を教えるプログラムです。メルボルン在住の小学生が集まってきました。11~12歳の子ども達が対象です。このデザインフェスティバルに参加する世界中のデザイナーが講師となり子ども達に語りかけます。2時間で2つの課題を与えます。子ども達に70cm角の白いダンボールが配られました。表面と裏面を使い2つの課題に絵で解答します。一つ目の課題は、「暮らしの中にあるデザインを絵で表現する」。ペンやノート、机や椅子、家や飛行機など、多くの子ども達がプロダクトをデザインと捉えているようです。そんな中、文章を書き綴る子どもを発見。自分の描くイメージを言葉にしているようです。コンセプトを見つけそこから絵を発想しようとしている様子です。驚きました。デザインとは何かが直感的に分かっているようです。すでにデザインの入り口に立っているように思います。
続いて、二つ目の課題が与えられます。「暮らしを快適にするためにデザインで問題解決をするには? 自由な発想でデザインをしてください」。ハードルがいきなり高くなります。まず、ロウソクで明かりをとっていた時代から電気を使って明かりをとる時代の話をします。そこにランプのデザインが生まれるといった内容の事例をいくつか示します。発想のヒントをもらった子ども達は、自分のイメージをどんどん絵に仕上げていきます。『肉の堅さと熱さを計る器具』を発想する子どももいれば、『農家の人たちの作業が快適になる持続可能な循環システムを取り入れた温室』を描く子どもも現れてきます。『鳥と話せるヘルメット』をデザインする子どももいます。子ども達の自由な発想に世界中のデザイナーが目を丸くしています。そして、仕上がった絵を『イームズのハウス オブ カード』のように組み合わせていきます。子ども達が描く未来のデザインの完成です。このデザインが講演会場の入り口に備え付けられました。
ヴィジョンがデザインを作り上げていきます。暮らしを快適にするといった「喜びを想像する」ことがデザイナーに求められます。『喜びをリレーする = RELAYING HAPPINESS』。今から行う講演の最後に語る言葉です。



I will return to Japan.

オーストラリアのメルボルンで毎年開催されているagIdeasというデザインフェスティバルにスピーカーとして招聘されました。40人近いスピーカーの中でアジアからは僕一人。英語の不得意な僕が通訳なしで40分の講演です。というのも事務局から「逐次通訳なら準備できるが講演時間が半分になってしまう。話す内容を事前に伝えてもらえれば英訳して別画面に映す」といってきたのです。でも、訳し方が伝えたい内容と違うケースもあるし、タイポグラフィを相手に任すのは嫌だし、かといって単にヴィジュアルだけを発表するのでは「話すデザイン」の僕じゃないし…。結局、自分の考えをしっかり伝える為に英訳をこちらで作ることに…。何度もネイティブに文章をチェックしてもらい、読みやすい文字数にもこだわって、画面そのものがタイポグラフィとして完成度のあるデザインに仕上げ講演することにしました。とはいえ、40分の講演。観客を退屈させずに最後まで聞いてもらえるか不安です。でも、やると決めて自分の中ではしっかりとシミュレーションをしてきたつもりです。ところが、メルボルンに着いた翌日、のんびりと観光をしている時に僕を担当してくれている留学生のKEISUKEから緊急の連絡が入ってきました。「マネージャーが三木さんのスライドを半分にしてもらって逐次通訳をつけるといっていますが、大丈夫ですか?」。今ごろになってです。事務局とマネージャーのコミュニケーションが上手く交わされていない様子。「半分!いまさらなるわけないやろ!通訳なしでやれっていったのは、そっちや!」と返答するも電話の向こうで「 NO ! 」と聞こえてきます。電話でやり取りするも埒(ラチ)があきません。あまりにもうるさくいってくるので「逐次通訳をつけて半分にするなら日本に帰る!」と大爆発。慌てた相手が「あなたの講演時間を60分に拡大する逐次通訳つけて30分で。いゃ、同時通訳を今から手配する…」と、急変。翌朝、ホテルにマネージャーがやって来て、僕の講演内容をPCで見せたら「ビューティフル、グレート。このプレゼンテーションなら通訳はいらないわ」と…。「だからいったでしょ!」。自分のプレゼンにデザイナーがコミュニケーションのとれないようなものを作るはずがありません。結局、通訳なしでやることに。講演前に大騒ぎになった今回のやり取り。agIdeasのスタッフ全員に知れ渡った様子。国際的なデザイン会議のブラックリストに上げられたのでは? 留学生のKEISUKEは、間に入ってウロウロ。その後も引き下がらない僕にきっと手を焼いているはず…。「自分を信じて、生涯最高の講演やってやる!」。すごいファイトが沸いてきました。
僕の出番は、明日、5月4日の午後1時15分から。