KenMiki & Associates

三木組奮闘記「光を観る」

学生諸君、暑さに負けずがんばってますか?twitterで「あっつい あっつい」なんて、ぼやいていませんか?そろそろ気合い入れていかないと締め切りに間に合わないですよ!
さて、三木組 『地図』に続く、Lesson 2 のテーマは『観光』。
「光」を「観」るって何なんでしょう? 『観光』の語源は、中国の『易経(えききょう)』の「観國之光。利用賓于王=国の光 を観る(みる)。用て王に賓(ひん)たるに利し(よし)」の一節にあるとか。学者や論者によって定義が違うようですが「王が広く人材を求め、国の光、国の名誉ともなるべき賢人や秀才を探し出し、招待して、親しくこれに会い、客としてもてなす」と解釈すれば『観光』の原意は、「国や社会の動きを見る王に見識の広さを見込まれてアドバイザーになる」といったところじゃないでしょうか。
大阪市の平松市長が「ためらいの倫理学」や「街場の教育論」の著者で神戸女学院大学教授の内田樹さんを7月より大阪市長特別顧問として委嘱するそうですが、これは、まさに『観光』の原意。平松市長は、内田さんの知の輝きを「光」と「観」ているんでしょうね。
そういえば、去年の僕の事務所で開いた天神祭パーティに内田さんが来てくれた時も後光がさしていたような…。(笑)
さて、その「光」が転じて「その国、その地域の最良の物や所を観ること」が今の『観光』になったといえます。いわば「国(地域)の光(優れたもの)を見せることで、賓客(大切なお客さま)をもてなす」ということになるんしょうね。いいかえれば「国や地域といったローカリティを耕すことで、新たな価値を発見し輝かせること」に「光」の意味があるといってもいいんじゃないでしょうか。「耕す=Cultivate」が「文化=Culture」の語源であることからして、「光」は「文化」そのものだと考えられます。つまり『観光』とは、『文化を観る』ことだといえます。『観光』は、政府(経済産業省)の新成長戦略『輝きのある日本』の6つの分野の1つとして位置付けられ、国をあげて観光立国に取り組む方針が立てられています。『観光』が経済を活性化させ、人にエネルギーを注ぎ、国を輝かせる。「光」はまばゆく、あらゆるモノを照らし、トキメキをもたらす存在。『観光』につきものの「みやげ」にワクワクするのもトキメキ。ここでしかないモノが「光」なんですね。「みやげ」が「土の産物=土産」と漢字で書くように、「みやげ」はまさにその地のポテンシャルを生かし輝いていなければなりません。「みやげ」は、ローカリティそのもの。また、『観光』と「経済」の象徴といえるかもしれません。地域主権や地域経営が叫ばれていますが『観光』について考え始めると、「政治」から「みやげ」までなかなか奥行きがあって面白い。
学生達の考える『観光』。どこに「光」を当ててくるのか、ちょっと楽しみ。
それにしても梅雨の湿気と夏日の暑さにまるでサウナに入っているようで「あっつい あっつい」。学生諸君! この時期、「光」を「観」るの暑すぎますか?

奇麗な机の9時半の男

今日のコラムは、いたずらの話。
先日、複数のデザイナーや編集者と飲んでいて、そこに参加していた若手のクリエイターの事務所に突如訪問することになりました。その事務所、グラフィックデザイナー・インテリアデザイナー・編集者といったそれぞれ独立した仲間が集まって一つの事務所をシェアしており、そのメンバーの二人からお誘いを受けて夜中の訪問になったのです。川沿いにあるその事務所、ビルのワンフロアーを間仕切りなしの大きな部屋で使っていて、ダーツや奇妙なオブジェがいたるところにある楽しそうな事務所です。突然の訪問ですからついさっきまで仕事をしていたのがわかるリアリティのあるデザインの現場でみんな興味津々。もちろん作業中の資料なども机の上に広がっていて何となくですが思考回路が垣間みれます。その中にビシッと片付けられた几帳面な机があるではないですか。机の上にコンピュータ以外なにもない整理整頓された机です。「これ、誰の机?」と、みんなが一斉に質問。その机の主がこの場にいないインテリアデザイナー笹岡周平さんの机だったんです。「すごいな!」「完璧に片付いている!」「美しすぎる!」などなど、そこに参加した柳原照弘さんと話していたら、服部滋樹さんが何やら机の横にある本やカーペットのサンプル帳を引っ張り出して、机の上に山積みにしていくではありませんか。「これは面白い!」明日の朝、彼が出社したら驚くに違いないとみんな急にテンションが上がり、いろんなモノを引っ張り出していきます。チームメイトの原田祐馬さんと多田智美さんは「僕たちがやると怒られちゃうから」といいながら楽しそうに手伝ってくれます。「これじゃ、単なるいたずら。誰がやったかわからない。もっと楽しく!」の声でコンピュータの画面にスパイ大作戦なみの指示書を貼付け、その指示書に従い事務所内を動き回る作戦を追加。「トイレに行け!柳原照弘」の指示書をまずコンピュータに貼付け、トイレには「本棚に向かえ!服部滋樹」の指示書が、本棚には「ダーツへ向かえ!三木健」の指示書が、ダーツには二つの選択肢があってダーツの得点によって指示先が違う仕掛け。一つは、笹岡さんの師匠、間宮吉彦さんの顔写真入りの「ハズレ」と、僕たち全員が即興で仮装した写真の「アタリ」を用意。夜中の事務所で俄然テンションの上がったみんな、雑誌を捲りながら間宮さんの顔写真を探し「ハズレ」のレイアウト。「アタリ」の僕たちの仮装の小道具は、なぜか事務所にあった「おもちゃ」を引っ張り出してみんなでアドリブ。オートタイマーにしたデジカメに向かって「ハイポーズ」で写真完成。それを急いでプリントしてみんなでサイン。今日ここに参加していない間宮さんの顔写真も四角く切り抜いて卒業アルバムの欠席者のようなレイアウトにして張り込む。仕上げに僕が間宮さんのサインをまねして出来上がり。真剣に馬鹿してたらどんどん盛り上がってきて笹岡さんの出社時間に向けて「明日、9時30分ゲームスタート!」の内容で全員が夜中に一斉ツイート。このメンバーを複数フォローしている人は「明日、9時30分に何が起るの?」と驚くはず。直ぐさま、それを見たフォロワーが騒ぎ出す。もちろん笹岡さんは、全員をフォローしているので何が起るのだろうと思っているはず。いや、蚊帳の外とくさっているかもしれない。まさか自分がその対象になっているとは思いもよらないはず。痛快。みんなんで笑い転げて真剣に馬鹿してたら学生時代にもどった気分です。
開けて翌日、笹岡さんから『みんなが言っていた「何かが起る!」は、これのことだったのかーっ!やられた!!』とツイートされる。それを見ていたフォロワーが「愛されてますね〜」と笹岡さんにツイートしてくる。いやはやお騒がせしました。それにしてもツイッター恐ろし。タイムラインに並ぶ9時30分の意味ありげな言葉の連続が時間と空間を超えて観客巻き込み一つになっていく。お祭りが始まる前の胸騒ぎのようでワクワクしてきます。
その後、僕は彼のツイッターを見る度に「奇麗な机の9時半の男」という言葉が脳裏に浮かぶ。今度、このコピーを入れたポスターでも作って夜中に張りにいこうか?
いや、その前に師匠、間宮吉彦があなたの「奇麗な机」を見に夜中に参上するはず。その時「ハズレ」のデザインを額に入れて飾っていてくれたら最高なんだけど…。