KenMiki & Associates

借脳(しゃくのう)

「あぁ〜」と、ため息つくぐらい仕事が片付きません。休日をほとんど返上して、ひとり事務所で格闘。ひとつの仕事で煮詰まってしまうと、二進も三進もいきません。「ウゥ〜」と、コンセプトを絞り出そうとしますが『デザインの神様』知らんぷり。
そんなこんなでコラムの方は、ずいぶん久しぶりです。
始めたばかりのtwitterの方は、仕事の合間にぼそぼそとつぶやいています。まだまだ戸惑い気味ですが、140文字の制限がコンセプトを明解に際立たせてくれます。新聞やテレビにかげりが出て、メディアのあり方が大きく変動しようとしています。ブログとも違う、新しいメディアの登場に僕たちのネットワークがアメーバーのように広がっていく感覚です。
さて、先日、大阪市交通局の情報誌「ノッテ オリテ」の取材を受けました。この情報誌、地下鉄・バス・ニュートラムに「乗って、降りて」が名前のいわれだそうで、毎号8万部も刷られるメディアだそうです。僕も何度か手にしたことがある情報誌です。5月25日に発刊される『水のある暮らし』号でリバーサイドにある僕の事務所に白羽の矢が…。
取材クルーは、ロケハン、インタビュー、撮影と3回も来社。通常は、インタビューと合わせての撮影らしいのですが、当日が雨。事務所からの外の眺めを考慮して撮影のみ延期。「雨も水なのに…。何か変なの」と思いつつ、いつもとは反対の立場で取材される側。「ADの指示には従わねば…」と、不思議な感覚です。立場が変わると見え方が違ってきます。
撮影の当日、研修でやってきた初出社の女性スタッフは、訳が分からないままモデルとして登場。みずみずしさがADの目にとまり、先輩を差し置いて最前列に座らされます。緊張に輪がかかって、さらに緊張している様子がうかがえます。
インタビューは「水の話いろいろ」。ライターの「水辺で暮らすことで、お仕事にどんな影響があるでしょうか?」という質問に、僕の職種に合わせ、シンボルマークのあり方について…。『水』を理念と比喩すると、それを凍らせた『氷』がシンボルマーク。小さく砕いて目的に合わせてアプリケーション。「おいしかった」と活動や商品が讃えられて、「清潔だった、透明だった」と理念が溶けて浸透する。と…。
果たして、「水の話いろいろ」の中で、この話が採用されるかどうかは分からないけれど、水と氷に比喩して僕のブランディング思想をメッセージしました。そんな水にまつわる取材を受けながら、僕の言葉をメモるライターの取材ノートを覗き込むと「情報の根」のような「言葉の地図」になっているではないですか。まるで、僕が考える「話すデザイン」の思考回路を図化されているようです。ライターの福田容子さんにご無理をお願いして、その取材ノートをここでご紹介させていただきます。彼女によるとこの手法、トニー・ブザンという方が考案した知識・思考の整理術で「マインドマップ」と呼ばれるものだとか。取材を受けながら僕はといえば、今日、夕方7時から心斎橋のApple Storeで開催されるJAGDA Design Cafeのトークショーの話にこの取材ノートを組み込もうと興味津々です。
話すことで相手の考えとコラボする。「話すデザイン」。
それは、相手の脳も拝借しながら言葉の地図を絵にすること。
これを借景ならぬ『借脳(しゃくのう)』と呼んでみるのはどうだろう。

「話すデザイン」のツイッター

twitterを始めました。と、いっても使い方がよくわからない。
「誰か教えて!」。
なんか、妙な強迫観念に縛られているようで、すごく緊張する。「ゆる〜い感じでと、いわれても…」と、事務所でぼやいていたら、スタッフに「ブログを始める時もそんなこといってましたよ」と。「あぁ〜」そうなんだよな。新しいこと始める時って、いつもビビってる。なんか不安。続くだろうか?ちゃんと推敲した文章を発信したいけど、そんなことしてたらライブじゃないし、つぶやきを聞かれるのもちょっと恥ずかしいような。すごく引っ込み思案な状態。
「よしっ」。気合いを入れて「実験的にチャレンジします!」。
「その、宣言がだめなの!」と、誰かにつぶやかれそう。
「話すデザイン」のツイッター版、ゆっくり始動します。http://twitter.com/ken_miki

『感じる箱展』の感じる対談。


先週の土曜日、dddギャラリーで開催中の『感じる箱展』でgraf(グラフ)の服部滋樹さんと対談をしました。服部さんとは領域を超えたデザイナー同士の密談(今はまだ秘密だけど、ちょっと面白い活動が始まる予定。)で意気投合して、今回のトークショーのゲストとしてお招きを受けることになったと思われます。(服部さん、それで間違いなかったよね?)彼とはずいぶん前に出会ったと思うのですが、なぜかシンポジウムや講演会で同席することもなく今回がはじめての対談です。開演1時間ぐらい前に会場入りして、お互いのスライド内容を軽く確認し合って、後は現場でのアドリブで話がスタートします。まずは、grafの結成当時の写真を見ながら現代の活動までを服部さんが紹介します。
バブル時代のトゲトゲした暮らしにアンチテーゼをするかのように結成されたクリエイティブユニットgraf。「豊かで美しい暮らしとは何か?」をテーマにデザイナー、アーティスト、家具職人、大工、シェフといった専門領域の異なる人たちが集合して誕生したgraf。今や、30人を超える大所帯のgraf。スペースデザイン、プロダクトデザイン、グラフィックデザイン、映像から食に至るまで暮らしを丁寧にデザインしていくのに垣根なんかつくらないgraf。チームのみんなが水平に思考しながらモノづくりやコトづくりを進めるgraf。そのgrafの結成当時の写真が、トークショー始まりのスライド。まるで革命や運動を起こす前夜の決起集会のように僕の目には映ります。「御主、なかなかいい写真を一枚目にもってくるではないか。伝説の始まりなのじゃな」と心の中でつぶやきます。
その後、服部さんがモデレーターとなって僕の話を上手く引っ張り出してくれます。今回の対談、grafの提示する『感じる箱展』のコンセプト「感じる」をいかにオーディエンスに感じてもらうかが最大のポイント。いろいろと考えた結果、話すようにデザインを進める僕の「話すデザイン」という考え方をベースに「デザインとは何か?」といった、中学生にデザインを教えるような内容で進めることに。
はじめて英語の授業で出会う「Lesson 1」のようなイメージです。「What is Design?」と投げかけながら、デザインという概念をあらためて見つめます。その始まりをここでちょっと紹介。

What is Design?

暮らしの中にたくさんのデザインがある。
ペンもノートも机も椅子も食器も…。
服も家も車も飛行機も…。
トイレのマークもお店のサインもポスターも…。
見方を変えれば、お料理だって、お掃除だって…。
みんなデザイン。
使いやすくて、気持ちよくて…。
見えないところもちゃんと考えられている。
それが、デザイン。
ワクワクしたり、ドキドキしたり、
なんだか嬉しくなるような…。
それが、デザイン。
だから、暮らしの全てを見つめる。
だから、デザインに領域なんかつくらない。
みんなの嬉しそうな顔を想像しながらデザインを考える。
デザインは、考え方を「考える」仕事。
デザインは、つくり方を「つくる」仕事。
色もカタチも重要だけど…。
その前に、大事なコトやモノをしっかりと見極める仕事。
まずは、暮らしを観察する。
そして、みんなの喜ぶ顔を想像すると…。
突然、気づきに「気づく」。
それがデザインのヒント。
それがデザインの種。
それをみんなに伝える。
それを暮らしに植える。 
喜びをリレーする。
それがデザイン。

まず、暮らしを観察することから始めよう…。

と、語りながら国語や数学、社会や理科の中に潜むデザインの概念や発想のヒントを事例で見せ「デザインと何か?」をひも解いていきます。考え方や作り方のプロセスを通して「感じる」を体感してもらいます。
オーディエンスのみなさんが熱くなってくる感じが僕たちにも伝わってきます。1時間30分の対談があっという間に終了しました。終了後、オーディエンスの中にいたgrafのメンバーから「お疲れさま!」の声をかけていただきます。なぜか、彼らの顔が少し上気しているようにも映ります。『感じる箱展』の感じる対談。僕の最大のターゲットは、服部さんをはじめとするgrafのメンバー。grafの活動を中学生に教えるデザインの話に比喩することで、より普遍的に伝わるのではないかと考えた次第です。なんか、彼らの顔を見て僕の役目が、ちょっと果たせたような気分でホッとしています。
「服部さん、ありがとね!」。この続きをまた、どこかで…。