KenMiki & Associates

目+上+手

韓国、ソウルからのコラム更新です。
朝一番の飛行機で関西国際空港を飛び立ち、グラフィックデザイナーでタイポグラファーのAhn Sang-Soo(アン・サン・スー)さんが教授を務めるHongiku Univ.(弘益大学)へ。アンさんとの久しぶりの再会です。
彼とは、10年以上前にJAGDA(日本グラフィックデザイナー協会)の企画でアジアの特集を行った時に香港で初めて出会いました。日本から、原研哉さん、長友啓典さん、永倉智彦さんと僕の4人が参加。香港からアラン・チャンさんとフリーマン・ロウさんが、そして、韓国からアン・サン・スーさんが参加してトークショーを開催しました。その後、AGI(世界グラフィックデザイン連盟)の集まりなど国際的なデザイン会議の場でよく出会い、彼が来日の際に僕の事務所を訪ねてくれたりして交流を深めてきました。
この度は、明日から始まるACA(アジア・クリエイティブ・アカデミー)での僕の講演とワークショップの情報を知ったアンさんが、訪韓に合わせHongiku Univ.でも特別講義をとの依頼で実現しました。講演は、ロンドンのKingston Univ.(キングストーン大学)でイラストレーションとアニメーションを教えるDamian Grascoigneさん(http://www.picassopictures.com/)と僕がそれぞれ1時間30分ずつの講義を行います。ダミアンさんのユーモアたっぷりの講演の後を受けて、の僕の番です。「ちょっと緊張してきました」。今回は、先日の中国での講演から9日間しか開いていませんがコンテンツをずいぶん見直し、再編集を繰り返してきたので内容は深圳のものとずいぶん異なっています。人前で初めて話す内容もあり飛行機の中でもその構成に余念がありませんでした。Design as we talk「話すデザイン」のテーマは同じですが、ローカリティの話、身体感覚の話、気づきの話、持続可能な話など僕のデザインとその環境を取り巻く関係性から「コンセプト→ストーリー→デビュー→アプリケーション」へと続く内容で僕の考え方を可視化させていく予定です。音や映像を盛り込んだ立体的な展開になっています。もちろんそこには、笑いを引き出す仕掛けも取り込み観客との距離を縮めるコミュニケーション手法も組み込んでいます。講演後、多くの方から考え方に賛同していただきました。何よりもアンさんが最前列で聴かれているのに緊張しましたが、アンさんがいっぱいの笑顔で「great!」といって握手を求めてくれ、ちょっとホッとしました。そして、講演後、アンさんお決まりの片目を隠しての写真ポーズで記念撮影。バックのスライドは、自己紹介のために準備したアンさんバージョンの僕のポートレートです。
この「片目隠し」、アンさんのホームページを覗いてみると世界中のデザイナーがこの格好で写真に写っています。アンさんに以前「このポーズにどんな意味があるの?」と尋ねたのですが「意味はないです」と解答が返ってきました。「陰陽のマークを意味しているのだろうか?」など、いろいろと想像するのですがまったくわかりません。
アンさんのアシスタントに尋ねてみるも、誰も「わからない」と返ってきます。ただ、その中の一人の女性が「ハングルで目の発音が『アン』、上の発音が『サン』、手の発音が『スー』。よって目+上+手のポーズじゃないかしら?」と、教えてくれたのです。アンさんにあらためて尋ねてみるも相変わらず「意味はないです」としか返ってきません。韓国語が全くわからない僕は、「目+上+手」の発音が「アン+サン+スー」だと確かめようがないのですが、妙にこの解答が腑に落ちるのです。みなさん、アンさんのホームページ(http://www.ssahn.com/)を一度覗いてみてください。「片目隠し」のユニークな写真が一杯掲載されています。僕には、世界中の人がアンさんの「片目隠し」ポーズで繋がっているように見えてきます。みんな茶目っ気のある表情で輪になっているようにも映ります。意味はともかく、一つのポーズでたくさんの人の記録を取り続けることで何かを発信しようとしているのでしょうか?
謎は深まりますが、アンさんといえば「片目隠し」は、世界中のデザイナーの知るところです。ちなみにここに掲載している大きな門のような建物がHongiku Univ.です。