KenMiki & Associates

AD KINTETSU かっこいいプロジェクト

近畿日本鉄道株式会社が100%出資する株式会社アド近鉄(AD KINTETSU)のシンボルマークをデザインしました。こちらの会社、近鉄グループや官公庁などの広告を中心に活動する広告代理店で、C.I.(コーポレートアイデンティティ)を導入するにあたり、いわゆるコンペティションではなく指名でのご依頼をいただきました。コンペにおける儚さを良くご存知の広告代理店だからこそ、課題に対して担当者と一緒になって取り組み、しっかりと議論を交わしながらデザインへと導いていく指名の方法を選択されたようです。選ばれた嬉しさと同時に責任の重さが僕の肩にのしかかってきます。ご依頼に来られた担当者からは、開口一番「明解な理念を表しているシンボルマークであることはもちろんのこと、社員全員が『かっこいい』と思えるようなデザインにして欲しい」とおっしゃいます。「かっこいい!」。これほど難しい依頼内容はありません。
プレゼンテーションの際に「社長、かっこいいでしょ!」って、言うだけではすまないし、理屈ばかりを先行させてロジカルでぐるぐる巻きのデザインだとなぜか心躍らないし、第一『かっこいい』なんて人それぞれだし、「ウゥ〜」すご〜く難しい。
でも、ご依頼の『かっこいい』って、極めて本質的なデザインの力じゃないだろうかと思えるのです。担当者は、C.I.の心づくり(マインドアイデンティティ)と顔づくり(ヴィジュアルアイデンティティ)をしっかり見据えておられ、このプロジェクトを通して「みんなの意識が一つになる」きっかけを探し出そうと考えられているご様子。
題して『AD KINTETSU かっこいいプロジェクト』の開始です。僕の脳裏に広がってきたのは、「理念に支えられた行動力のある会社を表現するには。コミュニケーションを切り口に新しい価値を提案するには。風雪に耐える打たれ強いデザインとは」などなど。『かっこいい』を可視化することへの自問自答が繰り返されます。長いデザイン経験の中で、新しいコミュニケーションを探るあまり実験的なシンボルマークを提案し、独りよがりのコミュニケーションになったこともありました。また、企業の歴史や文化に押しつぶされそうになりコンサバティブなデザインを提案してしまいトキメキを生み出せずに終わったこともありました。
今回の仕事、あらためて企業の持つポテンシャルやこの先の社会を想像しながら、しっかりと次に繋いでいけるデザインってなんだろうと考えさせられる機会を得ました。そんな思考のプロセスを通して、採用されたシンボルマークが下記のデザインです。AD KINTETSUの頭文字『AD』を上昇や発展を指し示すような方向性を表す造形「>」で表現するアイデアです。「明日へと動くチカラ」という言葉を添えて役員会に提案です。『かっこいい』というデザインになったかどうかは、見る人、使う人に任せるとして社員の方々がクライアントを訪問される際に「新しいマークです」という言葉と一緒に、挙って新デザインの『真っ赤な手提げ袋』を持参される姿にちょっとホッとしました。その後、ご依頼のあった担当者から「近鉄グループの各企業や他のクライアントから『かっこいいね』と言われます」と、嬉しい連絡がありました。
『AD KINTETSU かっこいいプロジェクト』。ここからは、この企業が仕事で社会に貢献して存在意義のある会社となっていくことが最も大切です。C.I.における体づくり(ビヘイビアアイデンティティ)をしっかりと達成せねばなりません。よって、『AD KINTETSU かっこいいプロジェクト』は、かっこ良くなるための努力を永遠に惜しまないことなのです。
『かっこいい』。それは、理念を具体的な活動として実行に移し、その活動が社会に求められ、それを持続できる環境をつくり出すことです。そして、人が、社会が、その活動を認めた証として賞賛する言葉なのです。いい方を変えれば、『かっこいい生き方』をする誓いを可視化することがシンボルマークを作るということなのです。
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洛東楽々、日々是好日。

僕が長くブランディングのお手伝いをしている洋菓子店の『マールブランシュ』が、清水寺の参道にあたる清水坂に新店舗をオープンしました。「観光」で賑わう京都の中でもひときわ世界から注目をされるエリア。京都を訪れる世界中の人が「ワクワクする。いつも素敵な街ね」と思っていただけるような、輝く京都の一助となれるような洋菓子店をめざそうと計画をしてずいぶん議論を重ねてきました。お店のコンセプトは、ずばり「観光」。折しも、国をあげて観光に力を注ぎ「輝きのある日本」を打ち出そうとしています。新たな京都の「光」を「観」るような「新しい京都のお土産に出会えるお店」を目指します。語れるモノづくりをベースに、この地域のポテンシャルを存分に生かした、ここでしか出会えない商品群でお客さまを待ち受けます。ドキドキします。ハラハラします。観光客にどんな反応が出るのだろう。外国人にどう映るんだろう。いつもの商品開発とはちょっと違います。
8月10日、小雨まじりの午前9時、門が開けられます。なんだか、通信簿をいただくような緊張感が社長はじめスタッフのみんなに広がります。「ようこそ、マールブランシュへ」。お客さまが吸い込まれるように入ってきます。みんな興味津々の様子で店内をじろじろと観ています。ひとつ、ふたつと商品がカゴに入れられていきます。若い女性が「可愛い〜」と、商品を手に取ります。どんどんと商品がカゴに運ばれていきます。店内では、日本語はもちろんのこと、英語、中国語が飛び交っています。すごいことになってきました。長〜い、うなぎの寝床のような店舗にお客さまが一杯。海外のみなさんもお気に召したご様子。なんか、さっきまでの緊張が嘘のよう。新店舗のオープンに何度も立ち会ってきましたが、こんなに国際色豊かな人達で混雑する風景を見るのは初めて。思わず「ウェルカム」といいそうになります。京都・新土産物開発。空間は、インテリアデザイナーの辻村久信さん。
清水さんへのお参りの際に、ぜひ、足を運んでみてください。「茶の助」・「菓の奴」と名づけた可愛いキャラクターが店内でみなさんをお待ちしています。

遊び心に粋な振る舞い。京の見立てがもてなす文化。
土を耕し、水に潤い、光り輝き、風に舞う。五穀豊穣、旬の歓び。
いにしえの音羽の山の清水に、こころ潤い、からだ舞う。
丁寧に、繊細に、丹精込めた、菓子づくり。喜ぶ笑顔に技磨く。
日を楽しみ、風を楽しみ、雨を楽しむ。洛東楽々、日々是好日。