KenMiki & Associates

かっこいい

最近、若い『クチュリエ (couturiere)』からの依頼で新しく誕生するオートクチュールのシンボルマークやポスターなどを制作しました。『クチュリエ』は、仏語で男性の『裁縫師』の意味。よく耳にする『オートクチュール』が高級注文服のことで、その主任デザイナーかつ総責任者の総称として用いられているのが『クチュリエ』です。
京都にアトリエ兼ショールームを持つKENICHI TANAKAは、エレガントでフェミニンな服を得意とするクチュリエ。KENICHI TANAKAの言葉を借りれば、「60〜70年代の気分が醸し出す豊かさ」や「伝統や文化を継承することで見つけ出せる未来」、また、着る人の個性が際立つ「空気のような服をつくりたい」という強い想いをメッセージできるヴィジュアルを望んでいるとのこと。そのKENICHI TANAKAの世界観を彼の創りだす服に単に寄り添うのではなく、僕の中にある感覚的なデザインをぶつけることでクリエイティブの摩擦を生み出そうと計画したのがここに紹介するポスター。ブランド名を拠り所にKENICHI TANAKAのタイポグラフィで一つのブランドイメージを作り上げていこうという発想です。今後、年2回のコレクションに合わせ制作する計画で、5年で20種類のポスターが出来上がることになります。連続する造形の個性がKENICHI TANAKAの服と相まって、目には映らないイメージを確立していくと思っています。
ブランドアイデンティティは、そのブランドの「らしさづくり」。理念や哲学を具現化するために徹底したこだわりを持つ。「そこそこいい」が最も危険で、「とことんやり抜く」。そこにお客さまとの絆が生まれ、ファンができる。不易と流行をしっかり見据えた、ぶれないモノづくり。そんな、全てを直感的に判断する言葉が『かっこいい』。僕の挑戦は、その『かっこいい』をコンセプトにすること。
『かっこいい』。極めて主観的な言葉のように聞こえますが、『かっこいい』にファッションデザインの全てがあるように思います。