KenMiki & Associates

言葉は言霊。

メルボルンで開催されたagIdeas 2011にスピーカーとして招聘されたのが半年前。海外での講演は何度か経験してきましたが、通訳がいないのは今回がはじめて。5月4日の午後から40分間のスピーチを無事終了しました。多くのデザイナーがユーモアたっぷりに自らの作品を紹介していきます。そんな中、僕はこの度の東日本大震災の話からはじめ、デザインの思想や哲学など持ち時間の3分の1を理念の話に使います。15分を過ぎる頃まで自分の仕事は一切登場しません。スピーチそのものをデザインすると決めて練りに練って組立ててきました。英訳のテロップも出来る限り簡潔にしてデザインの跡が見ないようにデザインしてきました。日本語と英語を交えてのスピーチです。多くのスピーカーが早口で捲し立ててくる中 、僕はゆっくり、さらにゆっくりと心がけます。「話すようにデザインをする」という僕の考え方を体現させる組み立てです。話し始めて数分、会場から拍手が沸きました。スピーカーにとってこれほどの支えはありません。メルボルン到着後、逐次通訳をつけるつけないで大もめしたのが嘘のようです。後半の作品を紹介する頃には、会場の真剣な眼差しが肌で感じとれます。スタッフ総掛かりで組立てたスピーチのデザイン。まさに『話すデザイン』のプレゼンテーションです。40分の持ち時間、数秒のずれで話を終了。控え室に戻るとチェアマンのKen Catoが「ファンタスティック!あなたの講演が始まるや否やこの騒がしかった控え室が40分間静かになった」と僕を抱きしめてくれます。そして、この部屋にいたスピーカーの全員が集まってきてくれます。会場にいたスピーカーもわざわざ戻ってくれて「コングラチュレーション!」。メルボルンの講演、無事終了です。オーストラリアの人たちに間違いなく伝わったと思います。多くの人から「複雑に構成されたミニマル」「哲学が詩的に伝わってきた」「涙が出てきた」とお褒めの言葉をいただきました。言葉は言霊。自分を信じて通訳なしでやって本当に良かった。事務所のみんなありがとう!