KenMiki & Associates

足の演技力

先日、京都・大阪間を走る京阪電車の二階建て特急に久々に乗車しました。今まで、数えるほどしか乗ったことがないのですが無意識に二階席を選んでいたようで、この度初めて一階席に座りました。本を読んでいて、停車駅でなにげにカーテンを開き窓の外を見ると、風景が足、足、足なんです。何のことだか分かりませんよね。僕もパニクってしまい一瞬何のことだか分かりません。この電車、一階の窓の位置がちょうどホームの床と同じレベルにあり、上半身が窓のフレームで切り取られているのです。ちょっと冷静になって観察をしてみると『足の演技力』とでもいうか、どの足もモノを申しているように映るではありませんか。ミニスカートの女の子が近づいて来るとドキドキするぐらいのローアングル。まるで、小津安二郎の地面ぎりぎりから撮影する独特のカメラアングルを観ているようです。思わず、カメラを取り出して「パシャパシャパシャパシャパシャ」。盗撮をしているようでシャッターの音が気にかかります。でも、こんな不思議な風景、今度いつ乗り合わせるかも分からないと思い夢中でシャッターをきりました。その時の写真を繋いで作ったのがここに紹介している映像。慌てて撮った写真なので地に足が着かない写真になってしまいましたがご勘弁を。
打ち合わせや撮影、時に講演や審査など、いろんな所に足を運ぶものですから思いがけないことに出会います。数年前に銀座でタクシーに乗っていて真横から衝突されたことがあります。救急車で病院に運ばれ、軽いむち打ち。その後、リハビリで首の牽引をしたのですが、その格好がどんな状況だろうと想像したら、ムズムズしてきて足下にあった鞄を引き寄せてカメラを取り出し自らを撮影。看護婦さんに笑われながらの激写です。
僕は、身を粉にしてビジュアルを創っているというか、フィールドワークの中で体当たりでコンセプトやデザインの種子を探すのが大好きです。
観察と想像。
暮らしの中の驚きや疑問に対し、自分の感性を素直に寄り添わせると意外なところにデザインのヒントが転がっています。そんな訳でデザインの世界に足を突っ込むと、日々ワクワクしながらの暮らしが続き足を洗うことができません。
フゥー。