KenMiki & Associates

まずは、倉庫へどうぞ。

僕の事務所は、1960年代に建てられた古い小さなビルで地下室があります。この地下室、作品の保管場所として使用しているのですが、日々、制作される資料などもわんさか置かれていてなかなか整理が追いつきません。と、いうかここ数年、何でもかんでも詰め込んで足の踏み場もない状態になっています。もちろん、倉庫ですので事務所のスタッフ以外立ち入り禁止なのですが、僕の理想では来られたお客さまを、いの一番にご案内できるようなアーカイブにすること。いや、これは言葉が過ぎました。「アーカイブのしっかりした倉庫であればいいのにな」と思い、スタッフ全員で会議。
いろいろ考えた結果、書籍やパッケージなどのサイズや重さを想定して収納方法は、大小2種類の段ボール箱と無印良品のファイルケースを準備して整理することに決定。2種類の段ボール箱は、小の箱を二段積み上げると、大の箱にピッタリ揃う寸法を割り出して別注しました。ここで重要なのは重さへの配慮。紙モノが多量になると結構重く安易に動かせません。その2種類の箱に中身を明解に表示したシールを貼って整理する。段ボール箱にすることでローコストで変更や入れ替えがフレキシブル。また、とりあえずの整理など煩雑になりそうな内容なども安易に保存。ポスターに関しては、複数の種類が一段のケースの中に納められるため、文字情報に加えてアイコン化したヴィジュアルで整理することで情報を一目でわかるように可視化しています。このように整理方法の基盤をつくることで『わかりやすさ』というデザインへと繋げていきます。ここでは、仕組みを考えることがすなわちデザインといっても過言ではありません。
以前、丸亀にある猪熊弦一郎美術館の作品収納庫を拝見したことがあるのですが、額装されていない作品や猪熊さんのコレクションが積み上げられている環境に興奮しました。作品そのものを直接見るのではなく、系統立てられた作品を空間を通して肌で感じることで、まるで猪熊さんの人生を垣間みるような錯覚です。学芸員の方に無理をいって作品を少しだけ見せてもらったのですが、作家の案内で好きな作品を選ぶプライベート美術館にいるような贅沢な時間でした。
そんな訳で、お客さまが来られたら「まずは、倉庫へどうぞ」というのは、いかがでしょうか。