KenMiki & Associates

三木組奮闘記 まだまだ続く、追加プレゼンと遅刻プレゼン。

課題、考現学百貨店の追加プレゼンと遅刻プレゼンが始まりました。次第に学生達のピッチが上がってきました。前回のプレゼンで「まだ、やり残していることがあるの!」といっていた『ぐるっとドーナツ』のKさん。3人がけの机7台を満杯にしてプレゼンが始まりました。「かわいい〜!」といっていた周りの学生達の目が、所狭しと並べられるドーナツに真剣な面持ちへと変わっていきます。「前回のプレゼンでは、市販のドーナツをサンプルに入れていたのですが、今回は、自分で考えたオリジナルレシピにそってドーナツを作ってきました。また、それぞれのドーナツを入れる袋には、ドーナツを発想するのに町で見つけた、私の『ぐるっと』のイメージの場所を地図で示しました。ドーナツを食べながら町を散策している様子を想像してみてください。なんだか楽しいと思いませんか? そして、そのドーナツを持って、『ぐるっと』のイメージがある場所に出かけて写真も撮ってきました。商品開発から販売促進まで展開しています」。すごいパワフルなプレゼンです。学生達から拍手が沸き起こりました。「がんばりま〜す」のKさん、恐るべし。クラスのみんなに本気モードを突きつけてきました。次のプレゼンテーターがたじろく程の迫力です。


続いて、『つむじコスモス』のMさんの追加プレゼンが始まりました。お客さまの『つむじ』をその場で撮影して、事前に用意したビジュアル(『つむじコスモス』、『つむじキノコ』、『つむじキャンディ』、『つむじ亀』、『つむじ藍染め』)を選んでもらい、すぐに『つむじ』と合成してオンリーワンのデザインを完成させる。という『つむじ』プロジェクト。前回のパネルのブラッシュアップに加え、今回は、全てのアイテムを実際の商品へと仕上げてきました。モノの力とでもいいましょうか、すごい説得力です。Tシャツにクラス全員の注目があつまります。その中にあらたなアイテムが…。彼女、曰く「スタッフ用なんです」といって見せられたデザインにビックリ! なんと、『つむじ』によるタイポグラフィです。この発想、すごすぎます。「どこから、こんなアイデアがでるのだろう?」いやはや、乗ってきました。とどまる所を知りません。「こうなったら、トコトン飛んでしまえ!」といって、「『つむじ』アルファベットをつくろう!」と発破をかけます。Mさんのジャンプ力すごすぎます。まさに『コスモス』級。『つむじコスモス』、本当に化け始めました。そして、ポスターに添えられたコピー「自分をもっとOPENに。」だって。おいおい、どこまでいくんや〜。


続いて大阪道頓堀周辺を中心とする立体看板の観察を進めてきたNさん。「大阪の色って派手でしょ。看板もすごいインパクト。これらの看板の中から色だけを抽出したとしたら、日本の伝統色やフランスの伝統色ならぬ、『大阪の色』が見つけられるのではないかと思ったのです。そこで、大阪名物の看板をモノクロのドット絵で表現し、『グリコカラーズ』や『づぼらやカラーズ』といった『大阪の色』で『大阪みやげ』が作れないかと考えました」。面白い発想です。色と文化をつないできました。それぞれの看板に使用されている色のみを色鉛筆や色紙に展開してきました。彼女によると、お調子者の意味である大阪弁の『いちびり』とCOLORをあわせた『いちびりCOLOR’S』がこのプロジェクトのネーミングだとか。このまま商品化されても何ら不思議ではありません。センスのいい『大阪みやげ』に脱帽。彼女の、この「発想」、この「デザイン力」をこのままで終わらせるのはもったいない。本人を呼んでもっとたくさんの『いちびりCOLOR’S』の商品を展開するようにと発破をかけます。さらに、色と文化を発展させれば『都道府県の色』や『世界の色』へとどんどん広がることでしょう。『四季の色』に注目すれば、新緑の季節の『複数の緑の色鉛筆』や紅葉の季節の『オレンジから赤へのグラデーションの色鉛筆』だって作れます。彼女も『ぐるっとドーナツ』や『つむじコスモス』に刺激を受けて、このままでは終われないと感じているはず。さらに期待です。


さて、『michi(道・未知)』というタイトルでアロマカフェを計画してきたKさん。学校への道を迷ったのか、未知の世界に迷い込んでしまったのか、遅刻プレゼンの授業終了間際に大遅刻で教室に飛び込んできました。後1分遅ければ、みんな帰ってしまっていたと思われます。なんとか「ギリギリセーフ」です。当初、自転車を観察対象にしていた彼女。アイデアがなかなかジャンプせずに困っていました。そこで、本人の興味や好きなことについて話してもらい、硬直した発想を柔軟な発想へと切り替えるために『気づきリスニング』を繰り返してきました。『気づきリスニング』? 聞き慣れない言葉ですよね。僕の作った造語で、学生達とのコンセプトミーティングで進めている会話手法なんです。「どうして、自転車を観察をしようと思ったのですか?」「えぇっと…私、どこにでも自転車で行くんです」。「どんな所へ行くの?」。「私、自転車に乗って、いろんな路地を散策するのが好きなんです。雰囲気のあるカフェも好きだし、アロマも大好き」。「じゃ、その好きな場所を観察に出かけませんか?それって、どこにあるのでしょうか?」。「谷町6丁目にいい感じの路地があって…。あっ!私、その場所、大好きなんだ! そこを観察して、好きなカフェでアロマ売る店をつくろかな?」。「いいんじゃないですか。さて、そのお店の名前はどうしますか?」。「えぇっと…」。「自転車で路地を散策するのが好きといってましたよね。どこが楽しいのです?」。「寄り道するのが楽しい…。それと、知らない道も面白いし…」。「知らない道がどうして面白いのですか?」。「うんと…。未知な所。あっ!私『michi(道・未知)』というタイトルにします」。「はい。それじゃ、次回までに路上観察をやり直してデザインを進めてくださいね」。が、数週前のKさんとの会話。こんな感じで学生達とコンセプトを探していきます。会話を可視化する。まさに『話すデザイン』です。
さて、Kさんのプレゼンが始まりました。本人が好きだといっていた『谷町6丁目にあるいい感じの路地』の写真を見せながらのアロマカフェを中心とした『町の魅力再生プロジェクト』のようです。カフェで使用するショッピングバッグがひなびた路地の風景になっています。その写真、色変換することと、アミ点で荒らすことで、風景に触覚性を与えようとしています。本人のいう『いい感じの路地』の気分がデザインの力で届けられてきます。また、町の地図をイメージさせるお香のパッケージも洒落ていてセンスの良さが滲み出てきています。
プレゼン終了後、「大人のデザインですね。君の感性がほとばしるいいデザインです。町の空気や気配が伝わってきますよ」というと、「ほっ」としたのか涙ぐみはじめているではありませんか。「おいおい、泣くなよ。じゃ、写真を撮らせてください」。「私っ!?」。「いやいや、君じゃなくて、君の作品ですよ!」「あぁっ!」といって緊張が溶けたようです。周りの学生から「この感じ、いつもよね!」と言われ、笑いが起きます。『デザインは、人を写す鏡』。彼女の優しい性格が伝わってきた所で今日の授業終了。
さて、まだまだ続く考現学百貨店の追加プレゼンと遅刻プレゼンですが、次回の授業からは、後期、2題目の課題『学校』が始まります。乞うご期待。
学生諸君!僕の周りが、君たちに注目してるよ!!