KenMiki & Associates

続・三木組奮闘記

大学の課題『地図』。学生によるプレゼンテーションを先週の土曜日に実施。実は、先々週の授業でいきなり「課題提出日を来週にします」と発表。つけ焼き刃なアイデアを持ち込む学生に「喝!」の気合いと、人前で自分の考えを話すことで考え方を考えざるを得ない状況を作り出すための荒技。というのも、長い時間を裂いてコンセプトの指導をし、人によってはメールでの相談に丁寧に応えているにも関わらず、次の授業で顔を合わせると「あの考えは辞めて、違う方向で…」と平気でいう学生が出てきます。「えぇ〜」。「君のあやふやな考えを整理してコンセプトの入り口を指し示す文章にするのにどのくらい時間をかけたと思うねん!」と、ぼやきながら「僕の勉強、僕自身が学ぶ場」と自分に言い聞かせていましたが、気づかぬうちに彼らの発想の未熟さを丁寧に指導しているつもりが、「彼らの考えにない発想を植え付けているのではないか?」「コンセプトの耕し方の指導がコンセプトそのものになっていないか?」「一番やってはいけない自分のコピーを作ろうとしていないか?」と、疑問を持ったのです。彼らの肉体を自らが酷使してコンセプトを絞り出さないと彼らの満足感や達成感に到達しない。彼らが手を動かし、試行錯誤を繰り返さずして、便利な回答機の先生になってはいけない。とりあえず思いつきを回答機に投げて「こんなん出ましたか。やっぱりやめた」じゃ、どうしようもない。「やる気」や「その気」といった「本気」になることが自分を最も磨くのに、どうすればいいんだろう?現状の学生の進捗状況からすると一週間後に提出となると、ちょっとタイト過ぎるかもしれないけれど、時間をかけても締め切りまでの間、のんびり過ごす学生が多いと判断。ダッシュを与えることで「やる気」を導く。さらに今回のプレゼンで不十分な仕上りの人、また、未提出の人はさらにダッシュを与え「本気」になるまでダッシュが続く。三木組はダッシュ、ダッシュで気づきに気づく。「学生諸君!これが後で効くんだよ」。あきらめないこと。とことんやること。僕は、「あの時、やっていたら」と、学生時代の苦い経験をずっと後悔していて、「君たちと真剣に学びたいの…」。「おいおい、金八先生になってるぞ!」と、どこかから突っ込まれそうですが、「三木組、ダッシュ!」。
というわけで、今日の三木組奮闘記はプレゼンテーションの話。最初のプレゼンテーターに僕が選んだのはOさん。何やら机の上にオブジェのような立体が置かれています。この彼女のプレゼンが、ちょっとゆるくなりかけていたクラスの雰囲気を一気に変え、本気モードにしてくれます。「自分の知らなかった自分に気づき、新しい自分に出会うための地図」がコンセプト。本人が描いている自分のイメージについて「クールぶっているが、実は涙もろい面がある」と自己分析。まずは、客観的に自分を見つめるために友人、知人40人以上に彼女自身のイメージについて本音で語ってもらうアンケート調査を実施。(回答者33人)。大学の友人以外にも幼なじみなど違う環境での自分イメージも知るためフィールドを拡大。アンケートの依頼文に「短所などもズバリいっていただけると嬉しく思います」と、調査の目的を明解にすることで自分の知らなかった自分に出会うきっかけを探すとのこと。集まった言葉から133のキーワードを拾い出し、重複した内容は文字を大きくすることで可視化。アンケート結果の生のデータは、自分の感情を加えないようにクールにモノトーンで表現。続いてそれぞれの言葉から感じる色を選び出し、感情と色についての考察。加えて、133のキーワードをそれぞれのイメージで図化し『133の感情のカタチ』を制作。そして、そのカタチと言葉と色を自由に組み合わせることのできる『感情の変化を表す立体地図』へ。もちろん僕は、この内容について本人とコンセプトミーティングをしており事前に知っていますが、一週間でここまで整理して分析して、デザインに仕上げてくるとは、まさにスーパーダッシュです。本人曰く「もっと偏った言葉が集まり、感情を表す色やカタチがある一定の方向に向かうのではと内心思っていたが、自分の予想を反してカラフルでバラエティに富んだ。経験や環境や状況で変化する心の動きを『変化し続ける地図』として表現することで、新たな自分に気づく機会を得た」という。クラス全員が吸い付けられるように彼女のプレゼンシートに集まってきます。
その後、複数のプレゼンテーションが終わり学生達による講評へ。推薦の弁と題して、気に入った作品の応援演説をしてもらいます。ある学生、『感情の変化を表す立体地図』に対して「一番最初のプレゼンを聞き、愕然とした。同じ時間を与えられているのに、私は…。ここまでやらなきゃいけないんだと痛感しました。凄いです!」僕は、その応援の弁を聞いて涙が出そうになるのを必死にこらえていました。素敵な学生達です。そうです。僕が悩むより彼らの心は素直に刺激し合って、「本気」になる機会を探しているのです。
三木組のみんな、マハトマ・ガンジーがこんな言葉を残しているよ。“Live as if you were to die tomorrow. Learn as if you were to live forever.”「 明日死ぬかのように生きなさい。永遠に生きるかのように学びなさい」。