KenMiki & Associates

三木組

初授業。
事務所を早く出発したのに考え事をしながら車を運転していて大学への道を迷ってしまいました。実は、ナビを使っていたのですが新しく出来た高速道路が入っていません。ナビが高速を降りろとアナウンスしますが「まだ、まだ。君、間違っているよ!コンピュータが知らない道なんだから」と、ブツブツいいながら走っていて気がついたら奈良へ。「ウヘ〜」コンピュータが知らない道どころか、僕が未知の道へと迷い込んでいるではありませんか。降り口を探すもずいぶん先。慌てて一般道に降りたら今度はすごく混んでる。初登校でいきなり遅刻のお粗末ぶり。最低です。ハァハァいいながら教室に駆けつけて、最初の言葉が「みなさ〜ん、遅くなりました。すみません」。(トホホ…)いやはや、なんという失態。
気合いを入れ直して授業開始です。スライドで僕のデザインの考え方や発想の仕方を講義して課題の説明へ。登校初日、未知の道へと迷い込んでしまった僕の課題は『地図』。何なんでしょね、この関係性?その『地図』の課題をここで紹介。

Lesson 1
テーマ:『地図』
旅先で地図を開いた時のワクワクする感覚は何だろう?知らなかった文化や、今から起こるかもしれない何かへの期待で心がときめくのだろうか?目を細めて、一つのことを掘り下げて見つめてみると、同じものを見ているのに、違うものが見えてくることがある。
例えば、街中にある文字を採集する旅に出かけてみると、それぞれのエリアで文字を通して何かの特徴や個性を見つけ出すことがあるかもしれない。飲屋街にある文字の個性、オフィス街にある文字の個性、温泉街にある文字の個性を地図に並べてみると、いつもは気づかなかった街の風景が立ち上がるかもしれない。また、色を採集する旅に出かけてみても、音を採集する旅に出かけてみても、匂いを採集する旅に出かけてみても、いつもは気づかなかった街の風景が立ち上がるのではないだろうか。
誰も気づかなかった地図を作る。そんな地図があると、それだけで街の魅力が増して観光客が押し寄せて来るかもしれない。「デザインで、伝わる」「デザインで、気づく」「デザインで、感じる」の3つの視点から対象を見つめ、あなたの感性でつくり出す新しい地図。これが今回のテーマです。対象にするのは、街でも、学校でも、家でも、あなた自身でも、お料理でも、コンビニでも何でも自由です。また、表現媒体もポスターでも、パッケージでも、書籍でも、映像でも何でも自由です。地図を広義に捉え、対象を深く掘り下げ、その魅力をみんなに伝えるために可視化(ヴィジュアライズ)する。あなたの五感をフル活動させて、ワクワクする『感性地図』をつくり出してください。
だれも知らなかった魅力をあなたの視点で探し出す。考え方を考える授業です。

次回からは、それぞれの考える『地図』について議論しながら言葉やヴィジュアルの断片を繋ぎ、未知の道を探し出していく。研究対象にするものから媒体まで自由と制約がなく、ポスターやパッケージやブランディングとフレームを与えられてきたみんなは戸惑うかもしれないけれど、本当の本当は「自分のものさし」でフレームを作り出さないとクリエイティブじゃない。はじめは、みんな迷子になるかもしれないけれど、気づきに気づけば自分の道を歩み出すはず。
僕の教育理念は、自分のコピーを作らないこと。彼らの目で見て、彼らの手で触れ、彼らの言葉で語れるデザインの入り口を指し示すこと。
内田樹のいうところの「学ぶ力」をみんなに気づかせてあげたい。(内田さん、「学力とは何か」をみんなに知らせますね!)言葉で気づきを可視化する『話すデザイン』の実力が試される。僕が学校に行く本当の理由、それは僕自身を鍛えるため。
三木組のみんな。
初日に迷子になった教師と一緒に地図をつくろう!