KenMiki & Associates

三木組奮闘記

大学での授業、予想していた以上に大変です。
2回目の授業から『地図』という課題に対して彼らとマンツーマンで話し合っています。真剣に議論をしていて、気がつくと授業時間が6時間をはるかに超えています。スクールバスの最終が近づいているのを学生に教えてもらい慌てて授業を終了する始末。結局、数名の学生の話が聞けずじまいです。話を聞けなかった学生諸君ごめんね。学生達に僕のメールアドレスを知らせましたが、これがまた大変。相談のメールに対して返事を書くのが一苦労。コンセプトの導き方についての内容ですから考え方の考え方を文章にして返信せねばなりません。文章にするのに半日は軽く取られてしまいます。時間配分をもう少し考えないといけません。しかし、36名のクラス。一人10分と単純計算をしても360分。軽く6時間はかかってしまいます。
ひとクラスの人数がちょっと多すぎやしませんか。これじゃ、毎回の課題ごとに合宿でもしないとやっていけない状況です。授業の仕組みそのものをデザインしないといけません。だけど、僕のデザインの根本は、話すようにデザインをする「話すデザイン」。みんなとの対話が最も重要。一方通行じゃ何も始まらない。「ウゥ〜」。そんな訳で3回目の授業もまたまた最終のバスまで。「トホホ…」。そんな過酷な状況ですが学生達の真剣な眼差しを見ていると、彼らにデザインの楽しさやコンセプトを見つけた時の喜びを味わってもらいたいと僕の脳にムチを入れます。学生の中には、僕との議論が終了しても教室でコンセプトを見直し再度打ち合わせにやってくる人もいますし、お喋りに余念のない人もいます。コンセプトの固まっている学生から帰宅をさせますが、僕は最後の一人まで解放されません。当然なんですけどね。
前回の授業前、嬉しいことに僕の「三木組」のコラムを読まれた絵本作家の先生が「課題面白いですね。地図の絵本がありましたので、よろしかったら参考にどうぞ」と、わざわざ資料をお持ちくださいました。(駒原先生ありがとうございました。)
周りの先生にも応援していただきながらの三木組奮闘記の様子、今日は学生達のユニークなコンセプトをいくつかご紹介したいと思います。まず、香川県出身の女子。「私、身体を使って地図を表現したい」。よって「自転車で大阪から実家の香川まで移動しながら空と大地の写真を撮り続け、その記録をデザインする」。フィールドワークで地図をつくるというのです。Googleマップのストリートビューを身体を張って実践するかのようです。3回目の授業を休んで移動中の状況を僕のiPhoneにレポートしてきます。その状況をクラスの学生にも伝えます。途中「先生、天気予報が嘘つきました。豪雨です」とメールが届きます。心配ですがどうしようもありません。ただただ、事故をせず無事完走することを祈るしかありません。翌日、心配で「どんな状況ですか?」とメールをしておくと「今、高松。これから丸亀にいきます」と元気な返信があり、ひと安心。次に「自転車で移動中の自身の写真も誰かに撮ってもらうように」と、メールしておくと、今度は「先生!自転車に乗っているところを写してもらおうにも香川に入ってから誰ともすれ違いません」と返信があり、のどかだなと感心。「実家到着」のメールが届いて「やれやれ」という感じです。まるで僕も一緒に旅してる気分です。内心「ようやるな」と、思いながら次回の授業にどんなものを持ってくるのか楽しみです。次に京都出身の女子。「傘の裏に京都の地図を描きたい」。雨の日の観光に地図の傘を貸し出すプロジェクトだとか。傘と地図で両手がふさがる雨の日に嬉しいホスピタリティのある企画です。観光客に喜ばれそうなリアリティのある発想に「なるほど!」。城崎の温泉街が雨の日に傘の貸し出しを街中でやっています。突然の雨に僕もずいぶん助かった思い出が脳裏に浮かびます。それにしても『哲学の道の傘』や『嵐山の傘』や『清水寺の傘』なんて傘があったら素敵だろうなと思えます。この企画しっかりデザインすればなかなか面白くなりそう。雨の日の京都観光キャンペーンになるのではと感心します。知人が京都府の山田知事と親しくしているので、仕上り状況によっては伝えてみようかと思うぐらいのアイデアです。続いて、猫好きの女子。ノミの生態について熱く語り始めます。『地球の歩き方』ならぬ、『ノミによる猫の身体の歩き方(グルメツアー)』の地図をつくるというのです。最終的には絵本にするらしいのですが「のみ」についてあまりの熱弁に僕は腹を抱えて笑い転げる始末。マニアックな地図を想像するだけでワクワクしてきます。この他にもユニークな発想がいっぱい。もちろん既成の枠から飛び出すのに苦労している学生もいますが、発想のジャンプ力は僕のおよびもつかない軽やかさです。後は、デザインへの定着。ここからがデザイナーの本領が試されていきます。それにしても2回目と3回目の授業時間の合計が13時間。これはもう「ウゥ〜」を飛び越えて「ドヒャ〜」です。それにしても若い彼らの発想力と行動力に感心と発見の授業です。
三木組奮闘記。これからどうなることやらですが、まずは滑り出しました。

フィールドワークで地図をつくるという学生から届いた写真