KenMiki & Associates

『感じる箱展』の感じる対談。


先週の土曜日、dddギャラリーで開催中の『感じる箱展』でgraf(グラフ)の服部滋樹さんと対談をしました。服部さんとは領域を超えたデザイナー同士の密談(今はまだ秘密だけど、ちょっと面白い活動が始まる予定。)で意気投合して、今回のトークショーのゲストとしてお招きを受けることになったと思われます。(服部さん、それで間違いなかったよね?)彼とはずいぶん前に出会ったと思うのですが、なぜかシンポジウムや講演会で同席することもなく今回がはじめての対談です。開演1時間ぐらい前に会場入りして、お互いのスライド内容を軽く確認し合って、後は現場でのアドリブで話がスタートします。まずは、grafの結成当時の写真を見ながら現代の活動までを服部さんが紹介します。
バブル時代のトゲトゲした暮らしにアンチテーゼをするかのように結成されたクリエイティブユニットgraf。「豊かで美しい暮らしとは何か?」をテーマにデザイナー、アーティスト、家具職人、大工、シェフといった専門領域の異なる人たちが集合して誕生したgraf。今や、30人を超える大所帯のgraf。スペースデザイン、プロダクトデザイン、グラフィックデザイン、映像から食に至るまで暮らしを丁寧にデザインしていくのに垣根なんかつくらないgraf。チームのみんなが水平に思考しながらモノづくりやコトづくりを進めるgraf。そのgrafの結成当時の写真が、トークショー始まりのスライド。まるで革命や運動を起こす前夜の決起集会のように僕の目には映ります。「御主、なかなかいい写真を一枚目にもってくるではないか。伝説の始まりなのじゃな」と心の中でつぶやきます。
その後、服部さんがモデレーターとなって僕の話を上手く引っ張り出してくれます。今回の対談、grafの提示する『感じる箱展』のコンセプト「感じる」をいかにオーディエンスに感じてもらうかが最大のポイント。いろいろと考えた結果、話すようにデザインを進める僕の「話すデザイン」という考え方をベースに「デザインとは何か?」といった、中学生にデザインを教えるような内容で進めることに。
はじめて英語の授業で出会う「Lesson 1」のようなイメージです。「What is Design?」と投げかけながら、デザインという概念をあらためて見つめます。その始まりをここでちょっと紹介。

What is Design?

暮らしの中にたくさんのデザインがある。
ペンもノートも机も椅子も食器も…。
服も家も車も飛行機も…。
トイレのマークもお店のサインもポスターも…。
見方を変えれば、お料理だって、お掃除だって…。
みんなデザイン。
使いやすくて、気持ちよくて…。
見えないところもちゃんと考えられている。
それが、デザイン。
ワクワクしたり、ドキドキしたり、
なんだか嬉しくなるような…。
それが、デザイン。
だから、暮らしの全てを見つめる。
だから、デザインに領域なんかつくらない。
みんなの嬉しそうな顔を想像しながらデザインを考える。
デザインは、考え方を「考える」仕事。
デザインは、つくり方を「つくる」仕事。
色もカタチも重要だけど…。
その前に、大事なコトやモノをしっかりと見極める仕事。
まずは、暮らしを観察する。
そして、みんなの喜ぶ顔を想像すると…。
突然、気づきに「気づく」。
それがデザインのヒント。
それがデザインの種。
それをみんなに伝える。
それを暮らしに植える。 
喜びをリレーする。
それがデザイン。

まず、暮らしを観察することから始めよう…。

と、語りながら国語や数学、社会や理科の中に潜むデザインの概念や発想のヒントを事例で見せ「デザインと何か?」をひも解いていきます。考え方や作り方のプロセスを通して「感じる」を体感してもらいます。
オーディエンスのみなさんが熱くなってくる感じが僕たちにも伝わってきます。1時間30分の対談があっという間に終了しました。終了後、オーディエンスの中にいたgrafのメンバーから「お疲れさま!」の声をかけていただきます。なぜか、彼らの顔が少し上気しているようにも映ります。『感じる箱展』の感じる対談。僕の最大のターゲットは、服部さんをはじめとするgrafのメンバー。grafの活動を中学生に教えるデザインの話に比喩することで、より普遍的に伝わるのではないかと考えた次第です。なんか、彼らの顔を見て僕の役目が、ちょっと果たせたような気分でホッとしています。
「服部さん、ありがとね!」。この続きをまた、どこかで…。