KenMiki & Associates

カタチのできるまで

中之島デザインミュージアム de sign de > の『野井成正の表現ー外から内へ/内から外へ』の『気づき場』で開催されているトークショーの第7回目は、野井成正さん、水谷光宏さん、道下浩樹さんによる鼎談。今回登場の水谷光宏さんは、若い頃、現代美術作家を目指されていた方。透明でミニマルな表現に注目が集まるデザイナーです。実は、僕の事務所も彼による設計。道下浩樹さんは、ずいぶん前に水谷さんの紹介で一度お会いしたことがあります。長い髪の毛にサングラスの風貌で、すご〜く怖そうな印象が残っています。最近、あらためて彼の仕事をウェブを通して拝見したのですが、こだわりの中に人を包み込む優しさが現れていて、ちょっとホッとしたというのが僕の感想。そんな二人が野井さんを囲んで「カタチのできるまで」といったタイトルで話すそうです。
さて、そのカタチ、実は作ってみないと分からないというのがデザイナーの本音だと思います。こんなことを公然で話すと信用をなくしそうですが、いくら完成予想を描いても作ってみて初めて気づくことがたくさんあるはず。だから、作りながら考えるというのが実のところ。野井さんの空間にいたっては、図面に落としようのないデザインが多く、現場での閃きや職人とのコラボレーションがいっぱいありそう。インスタレーションっていうか現場でしか作れないデザインで楽しいだろうな。デザインは計画だけど、理屈を超えて身体が無邪気に喜ぶものがみんなの嬉しいものだったりします。さてさて三人のトークショー、どんな内容になっていくのでしょうか?「カタチのできるまで」のプロセスは、いろいろでしょうが完成した時の喜びは、ひとしお。まるでジグソーパズルの最後のピースがはまった時の嬉しさに似ているかもしれませんね。
ところで、みなさんはジグソーパズルのジグソー(jigsaw)という意味をご存知ですか?
糸鋸(いとのこ)という意味だそうで、このパズルを考案したロンドンの地図職人が木の板を糸鋸で切って作ったことが言葉のルーツ。ちなみに、このパズル、子供の教育のために国の形のピースを組み合わせると地図が完成するものだったらしいのです。
三人のデザイナーが、ゴシゴシと糸鋸を使って模型を作っている姿を想像してみてください。きっと、少年のようなルンルンした気分で制作していることと思います。
三人のおじさんの無邪気な笑顔を見に、ぜひ会場へお越し下さい。USTでは、伝わらない興奮が伝わるはずです。


中之島デザインミュージアム de sign de > talk
カタチのできるまで
野井成正(空間デザイナー) × 水谷光宏(デザイナー)× 道下浩樹(デザイナー)
2011年6月14日(火)18:00-20:00(参加受付は17:30から)
参加費:1,000円/1ドリンク付き
定員:40名
会場:中之島デザインミュージアム de sign de >
大阪市北区中之島5-3-56 中之島バンクスEAST
Phone.06-6444-4704 Email:info@designde.jp http://www.designde.jp


インテリアデザイナーの戦い

中之島デザインミュージアム de sign de > の『野井成正の表現ー外から内へ/内から外へ』の『気づき場』で開催されているトークショーの第6回目は、インテリアデザイナーの近藤康夫さんと野井成正さんと間宮吉彦さんによる鼎談。東と西の両雄をファシリテーター役の間宮さんがどのように導いていくのだろう?ご自身も参戦して三つ巴のバトルになっていくのだろうか?インテリアや空間に携わる方なら知らない人はいない3人のトークショー。題して『インテリアデザイナーの戦い』。ちょっと楽しみ。
ところで、この『インテリアデザイナー』って名称にすこし違和感があると思いませんか?「内部の、内側の」を意味する『インテリア(Interior)』と「外部の、外側の」を意味する『エクステリア(Exterior)』の『In』と『Ex』の全てを見つめないと『快適な暮らし』なんてありえないのに、どうしてインテリアデザイナーという名称になったんだろう?「室内装飾家」と訳してしまうとデザインが単なる装飾になってしまうし…。きっと、『インテリアデザイナー』という職業がまだ定まっていない時代に名づけられたのでしょうね。というグラフィックデザイナーも同様で、図案家なんて呼ばれていた時代がありました。挿絵や文字をレイアウトする人と捉えられていたようです。でも、これを漢文的に読むと「案を図る人」となるので、僕はあえて『グラフィックデザイナー』と名乗っています。というか新しい名称をつけてもいつか時の流れで風化するように思えるからです。そう考えると「インテリアデザイナーでいいじゃない」と思いつつも、空間を内と外に分けて捉える発想に違和感があるのです。いまやデザイン領域を横断的に捉えないデザイナーはいないわけで、意味にこだわる僕の悪い癖なのかもしれません。
野井さんの展覧会『外から内へ/内から外へ』の空間で語られる3人の話。きっと、『In』と『Ex』の間を揺れ動くことと思います。3人の巨匠の「内」と「外」に興味のある方、是非会場にお越しください。


中之島デザインミュージアム de sign de > talk
インテリアデザイナーの戦い
近藤康夫(インテリアデザイナー) × 野井成正(空間デザイナー) × 間宮吉彦(空間デザイナー)
2011年6月9日(木)18:00-20:00(参加受付は17:30から)
参加費:1,000円/1ドリンク付き
定員:40名
会場:中之島デザインミュージアム de sign de >
大阪市北区中之島5-3-56 中之島バンクスEAST
Phone.06-6444-4704 Email:info@designde.jp http://www.designde.jp

正しいボタンのかけ違い方

中之島デザインミュージアム de sign de > の『野井成正の表現ー外から内へ/内から外へ』の『気づき場』で開催されているトークショーの第5回目は、橋本健二さんと服部滋樹さんと原田祐馬さんの鼎談。50代、40代、30代の三世代が60代の野井さんとの関わりから、暮らしや哲学まで「人とデザイン」について語る2時間。題して『正しいボタンのかけ違い方』。何だか演劇でも始まりそうな楽しいタイトルにちょっとワクワクしてきます。
それでは、3名の登場人物をご紹介します。橋本さんは、明治の初期に建てられた小学校を部分移築し資材置き場として使っていた空間を自らの事務所に改築。その空間に時々開店する『BAR橋本工務点』で日本商環境設計家協会のデザイン大賞を受賞された方。建築家でありながらミュージシャン、古き良き時代のアメ車をこよなく愛する方。残すべきモノと残さないモノをしっかり見つめるロン毛のおじさん役で登場。続いて服部さんは、プロダクト・スペース・コミュニケーションのデザインを基軸にアートから食に至るまで「暮らしを豊かにするコトづくり」を実践する『graf』を率いるクリエイティブディレクター。最近は、用途や役割を限定せず使い手の自由な発想に委ねる家具『TROPE』を発表し、ダンサーとのコラボレーションで身体と家具の関係について興味を持たれている方。丸い黒ぶち眼鏡にあごひげを蓄えたファシリテーター役で登場。原田さんは、ブックデザインや展覧会のサイン計画など数多くのアートシーンで活躍するデザイナー。その一方で、大阪でも東京でもない世界の東に位置する日本に「国際基準のデザインを…」と呼びかける『DESIGNEAST』を仲間と一緒に立ち上げられた方。少年のような表情の奥にある鋭い視線で社会とデザインの接点を見つめ、まずは状況を作り出すことでデザインを始めようとするグランドデザイナーの役で登場。ジェネレーションを超えて飛び交うデザイン談義は、きっとアドリブがいっぱい飛び出すはず。デザインエンターテイナーの3名の舞台、現場でないと味わえない状況がつくり出され歓喜の渦に包まれると思います。洒脱な感覚の軽妙なトーク『正しいボタンのかけ違い方』。乞うご期待。



中之島デザインミュージアム de sign de > talk
正しいボタンのかけ違い方
橋本健二(建築家)× 服部滋樹(クリエイティブディレクター)× 原田祐馬(デザイナー)
2011年6月3日(金)18:00-20:00(参加受付は17:30から)
参加費:1,000円/1ドリンク付き
定員:40名
会場:中之島デザインミュージアム de sign de >
大阪市北区中之島5-3-56 中之島バンクスEAST
Phone.06-6444-4704 Email:info@designde.jp http://www.designde.jp

気づきに気づく

中之島デザインミュージアム de sign de > の『野井成正の表現ー外から内へ/内から外へ』の『気づき場』で開催されているトークショーの第4回目は、服部滋樹さんと僕の対談。野井さんの空間『気づき場』で『気づきに気づく』という話をする予定。
「どうして予定かって?」。服部さんとの対談は、ジャズセッションのように空気を読みながらアドリブで進んでいくからです。
服部さんは、いつも僕の言葉を「フワッ」とキャッチして軽くパスを出してくれる。僕が「ピョン」とジャンプするタイミングを計ってのパスです。ぼんやりしてて、そのパスを受け損なうこともありますが、そんな時でも彼は僕のポロした言葉を上手く拾って次へパス。時々、観客にパスを出したりもします。手元がゆるんで自分もポロをすることがあっても、それがまた観客の心を掴んで離さないのです。相手の言葉を生き生きとさせていくパスの名手です。つまりコミュニケーションの『間(ま)』を見つけだす天才なんです。話す人、聞く人の脳の「すき間」を活性化させる服部さんは、「人間」や「時間」を包み込む暮らしという「空間」をデザインする才能に長けたクリエイターです。そんな訳で、彼との対談ポスターは、『気づきの間(ま)』をデザインすることに…。そして、服部さん率いるgrafが生み出す『上質な暮らしの間(ま)』に似合う「どこかなつかしくて、それでいて今の時代の新鮮な空気を運んでくれる」ポスターを模索したのです。赤と青の反対色を選んだのも、モダンデザインの夜明けの時代のような、何かに突き動かされる「ときめき感」をメッセージしたいと思ったから…。
服部滋樹(気)と三木(気)健の『気づきに気づく』対談。ライブでしか味わえない言葉のキャッチボール。時々、みなさんにもパスを出して楽しいトークショーにするつもり。5月27日(金)の午後6時30分。野井さんの『気づき場』でお待ちします。


中之島デザインミュージアム de sign de > talk
気づきに気づく[日常編]
服部滋樹(クリエイティブディレクター)× 三木健(グラフィックデザイナー)
2011年5月27日(金)18:30-20:30(参加受付は18:00から)
参加費:1,000円/1ドリンク付き
定員:40名
会場:中之島デザインミュージアム de sign de >
大阪市北区中之島5-3-56 中之島バンクスEAST
Phone.06-6444-4704 Email:info@designde.jp http://www.designde.jp

言葉は言霊。

メルボルンで開催されたagIdeas 2011にスピーカーとして招聘されたのが半年前。海外での講演は何度か経験してきましたが、通訳がいないのは今回がはじめて。5月4日の午後から40分間のスピーチを無事終了しました。多くのデザイナーがユーモアたっぷりに自らの作品を紹介していきます。そんな中、僕はこの度の東日本大震災の話からはじめ、デザインの思想や哲学など持ち時間の3分の1を理念の話に使います。15分を過ぎる頃まで自分の仕事は一切登場しません。スピーチそのものをデザインすると決めて練りに練って組立ててきました。英訳のテロップも出来る限り簡潔にしてデザインの跡が見ないようにデザインしてきました。日本語と英語を交えてのスピーチです。多くのスピーカーが早口で捲し立ててくる中 、僕はゆっくり、さらにゆっくりと心がけます。「話すようにデザインをする」という僕の考え方を体現させる組み立てです。話し始めて数分、会場から拍手が沸きました。スピーカーにとってこれほどの支えはありません。メルボルン到着後、逐次通訳をつけるつけないで大もめしたのが嘘のようです。後半の作品を紹介する頃には、会場の真剣な眼差しが肌で感じとれます。スタッフ総掛かりで組立てたスピーチのデザイン。まさに『話すデザイン』のプレゼンテーションです。40分の持ち時間、数秒のずれで話を終了。控え室に戻るとチェアマンのKen Catoが「ファンタスティック!あなたの講演が始まるや否やこの騒がしかった控え室が40分間静かになった」と僕を抱きしめてくれます。そして、この部屋にいたスピーカーの全員が集まってきてくれます。会場にいたスピーカーもわざわざ戻ってくれて「コングラチュレーション!」。メルボルンの講演、無事終了です。オーストラリアの人たちに間違いなく伝わったと思います。多くの人から「複雑に構成されたミニマル」「哲学が詩的に伝わってきた」「涙が出てきた」とお褒めの言葉をいただきました。言葉は言霊。自分を信じて通訳なしでやって本当に良かった。事務所のみんなありがとう!