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ブログ「話すデザイン ⇄ 聞くデザイン」

三木健デザイン事務所 公式ブログ

Yearly Archive

  • de sign deできること

    中之島デザインミュージアム de sign de > の『野井成正の表現ー外から内へ/内から外へ』の『気づき場』で開催されるトークショー。多彩なゲストを迎える第1回目が、建築家・宮本佳明さんと空間デザイナー・間宮吉彦さんの対談。テーマが『de sign deできること』。宮本さんといえば、阪神淡路大震災で実家が全壊され、復興のシンボルとなるような強いメッセージを込めて元の建物を再生し『「ゼンカイ」ハウス』という構造をむき出しの建築で多くの物議を交わした方。その『「ゼンカイ」ハウス』に自らの事務所を構え、強いメッセージ性のある建築を提案し続ける気骨のある方。ジャン・ヌーベルが絶賛したというこの建築が多くの建築家に刺激を与えたのはいうまでもありません。その宮本さんを迎えて、 de sign de > のコミッティメンバーであり、野井成正さんに教えを受けたこともある間宮吉彦さんがどんな対談をするのか?ちょっとドキドキしてきました。というか真剣に向かい合わねばなりません。
    下記に掲載したポスターは、宮本さんの『「ゼンカイ」ハウス』の構造をシンボリックにアイコン化し、東日本大震災の3.11と阪神淡路大震災の1.17に共通する『11』を重ねることでこの大きな震災を体験した僕たちが「広くデザインで何が出きるか」という問いを投げかけたいと考えました。また、お二人の対談日の5月11日が、東日本大震災から偶然にも2ヶ月目だということにもこの対談の意義を深く感じずにはいられません。『de sign deできること』を野井さんの『気づき場』で議論する。気づきに気づくトークショー、先着順で要予約とのこと。議論の後は『たまり場』でさらに議論をする方もいれば、飲み崩れる方もあり…。
    みなさん、 de sign de > のトークショーで連休明けにお会いしましょ。

    中之島デザインミュージアム de sign de > talk
    「de sign deできること」
    宮本佳明(建築家)× 間宮吉彦(空間デザイナー)
    2011年5月11日(水)18:00-20:00(参加受付は17:30から)
    参加費:1,000円/1ドリンク付き
    定員:40名
    会場:中之島デザインミュージアム de sign de >
    大阪市北区中之島5-3-56 中之島バンクスEAST
    Phone.06-6444-4704 Email:info@designde.jp http://www.designde.jp

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  • 3つの「場」の展覧会

    中之島デザインミュージアム de sign de > の開館記念展『野井成正の表現ー外から内へ/内から外へ』が始まりました。野井成正さんは、商業施設の中にランダムな線や面で構成されるインスタレーションを組み込むことで空間にズレや重なりを作り、密度の異なる「間(ま)」によって不思議な時間を生み出すデザイナーです。空間を通してヒトとヒトが出会い、そこにヒトとコト、ヒトとモノの関係性が生まれるデザインを考えてこられたのだと思います。
    今回の展覧会では、間伐材を使い開発した独自のユニットシステムで自由に空間をつくり出し、素材をいためず元通りに復元できる仮設空間や、竹を使った独創的なインスタレーションと壁いっぱいに描かれたドローイングが刺激し合う野井ワールドが展開されています。野井さん曰く「竹を通り抜ける人によって竹が揺れ、時にぶつかり音が鳴る、そこに偶発的な場が誕生してコミュニケーションが生まれる」とのこと。ここは身体感覚を開く『気づき場』として位置づけられているようです。その他に『まなび場』『たまり場』といった『BAR[場]-[野井]NOI』が会期中に数多く開かれるようです。『場』を形成させるヒトとヒトのコミュニケーションが僕たちにどんな気づきをもたらしてくれるのか、ちょっと楽しみです。
    ここに掲載した野井展のポスターは、野井さんの空間にみるインスタレーションに刺激を受けて制作したもの。ポスターを見られた瞬間、野井さんが「ええな、これ。俺の名前や」と言ってOKマークを示されたのがチャーミングでした。66歳の野井さんを囲んで若手のクリエイターがみんなで盛り上げる。東日本大震災で苦悩する日本だけど、「de sign de できること」をみんなで考える。そんな「場」を野井さんがつくり出してくれました。夜な夜な展開する『たまり場』も楽しみだし、野井さんのワークショップ『まなび場』も期待が膨らむし、建築家の宮本佳明さん、デザイナーの安積朋子さん、インテリアデザイナーの近藤康夫さん、グラフィックデザイナーの杉崎真之助さん達が登場する『気づき場』のトークショーも楽しみ。春から夏に向けてなんだかワクワクするde sign de > へ、3つの「場」を楽しみにいらっしゃいませんか。

    中之島デザインミュージアム de sign de > 開館記念展[創造のアーカイヴ vol.1]
    野井成正の表現ー外から内へ/内から外へ
    2011年4月26日(火)-7月3日(日)12:00-19:00(入場は18:30) 月曜休館 

    会場:
    中之島デザインミュージアム de sign de >
    大阪市北区中之島5-3-56 中之島バンクスEAST
    Phone.06-6444-4704 Email:info@designde.jp http://www.designde.jp

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  • 三木組奮闘記 2年目の春

    東日本大震災と福島原発事故から一ヶ月が過ぎました。いまだ全容が見えない厳しい状況に不安が募るばかり…。それでも桜が開花して春がやって来ました。『三木組奮闘記』2年目の春。新三年生の前期の授業がはじまります。三木組のみんな大丈夫ですか?それでは、元気に授業を始めます。三木組の授業は、「◯◯のポスターを作りましょう」や「◯◯のブランディングを考えましょう」といった媒体を設定したり、方法論を設定するものではありません。一言でいうと「自分で課題を探す」授業です。たぶん、いままで多くの人が与えられた問題に答えを探すことで評価を得てきたことと思います。だから、はじめはみんな戸惑います。もちろん、媒体の特性を知ったり、方法論を教わるなど基本を学ぶことは、とても大切なこと。三木組の授業のやり方を旅に比喩して紹介するならば、海外への一人旅を計画するようなもの。団体ツアーで行く旅と違って交通手段から宿の手配まで、すべての計画を自分でたてなければなりません。でも、旅の途中で気が変われば、自由に計画を変えて行動ができます。違う国に行こうが、同じ場所に滞在しようが全てあなたの自由です。自由だから「はい、準備しておきましたよ」なんてお膳立ては一切なし。あなたの考えで旅を楽しむ。これが三木組の基本です。旅の計画を立てたことのない方にとっては、ちょっと不安ですよね。「でも、大丈夫です」。すぐに慣れます。慣れるどころか、自由になってものすごく楽しそうに羽ばたいていった君たちの先輩を、僕は昨年の一年間たくさん見てきました。自分の目で見て、自分の手で触れて、自分の頭で考える。この当たり前のことが三木組の授業の基本です。WEBから得る情報を簡単に鵜呑みにしてはいけません。しっかりと観察する。納得するまで調べる。現場に足を運び五感全てを奮い立たせて実感する。この『観察』を重要視します。そして、そこで見つけた発想のヒントを『想像』へと膨らませることを体験してもらいます。『観察と想像』がデザインの種となる『気づき』を生みます。それを見つけた人は、勝手に羽ばたいていきます。僕の教育方針は、「自分のコピーを作らない」こと。つまり、僕のデザインを写させるような授業はしない。みんなの自由な発想力をより大きくジャンプさせる『跳び板』になること。上手くジャンプするタイミングやコツはアドバイスしますが、走るのも、跳ぶのも、みなさんの勇気です。未知なる道を自分で切り開く。これがデザインの旅のはじまりです。
    それでは、[テーマ]を発表します。

    [テーマ]
    ◯+◯=行為と状況

    自らが課題を探す『課題』です。この課題は、『1+1=?』といった単に回答を探すデザインを求めていません。『1+1』の部分に『◯+◯』を、『=?』の部分に『=行為と状況』をあてはめてください。数式にすると『◯+◯=行為と状況』となるようなデザインを考える課題です。つまり、考え方をデザインしたり、つくり方をデザインする課題だと考えてください。従来の解決方法を導くデザインとは少し違う、答えを導くまでのプロセスをいかに新しい視点で組立てていくかといった課題です。言い方を変えれば、決められた道をどれだけ楽しくデザインするかといった考え方ではなく、未知なる道を切り開くことで『行為と状況』を生み出す、新しいコミュニケーションの姿をデザインの価値と呼ぼうとする考え方です。「まどろこしいですね」。少し事例を出して課題の説明をします。例えば、ある町が景観を活かして観光について考えるといった課題をあなたが設定したとします。町にある樹木の中で「子どもが木に抱きつき、手をいっぱいに伸ばしても届かない太さの木は、伐ってはならない」というルール(=コンセプト)を決めたとします。そのルールを『子どもがハグして決める伐採禁止法令』という呼び方(=ネーミング)にします。『成長した樹木は、“町の財産”。 それをみんなで見守る』といった考え方が理念です。町の子ども達が木にハグをしながら、「これ、町の財産」といって景観を守っていく姿が想像できませんか?そのハグする『行為』が、ちょっとチャーミングだと思えませんか?観光にやって来る子ども達も、こぞって木にハグするような『状況』が思い浮かびませんか?メディアやニュースは、「◯◯町の町議会で『子どもがハグして決める伐採禁止法令』が採択されました。町中の子ども達が、『この木、町の財産』といってハグをしています。ユニークな光景ですね」と伝え始めます。もし、こんなユニークな法案が採択されたとしたら、あなたならどんなデザインをしますか?子ども達が手を一杯に広げて木にハグしている写真を撮りませんか?もしくは、一本の木にたくさんの子ども達が登って、上から下までコアラみたいにハグする写真を撮ろうなんて考えませんか?なんだかワクワクしてきて、どんどんアイデアが飛び出しそうな気分になりませんか?『◯+◯=行為と状況』。この『◯+◯』は、考え方をデザインするプロセスだと位置づけてください。『美しい景観を残す+子ども達が見守る=そこに観光という行為や状況が生み出される』。新しいコミュニケーションの道を切り開く考え方を提案してください。自由になって、真剣になって、あなたが楽しくて楽しくて仕方がないデザインを考えてください。

    いかがでしたか。三木組、新三年生の一回目の授業。
    授業の最後に、三木組のみんなと『子どもがハグして決める伐採禁止法令』をイメージしながら記念撮影。「みんな、子ども達の気分になって!」。「はい、ポーズ」。子どもが木にハグする。ハグされた木が子どもを抱きしめる。三木組のみんなが子どもになったり、木になったり『行為と状況』。三木組のみんな素敵な笑顔です。

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  • VISIONS of JAPAN

    世界中が震撼した東日本大震災と、それに伴う福島原発事故から2週間が経過しました。
    被害を受けられた方々に心からお見舞いを申し上げると共に、お亡くなりになられた方々のご冥福と、安否の分からない方々の無事をお祈り申し上げます。そして、原子力発電所の予断を許さない状況に日々不安が募ってまいります。「なんとかこれ以上事故が拡大しないで欲しい」。「お願いだから、助けて欲しい」。切に願うしかない自分の無力さに愕然とするぐらい打ち拉がれています。いま、僕にできることは何だろう?医学に例えるならば、西洋医学にみるような即効性のある復興活動は、多くの専門家やボランティアにひとまず委ね、僕は物資や義援金など、わずかであるが経済的な支援にまわり、東洋医学にみるような全体と部分を見渡す今後の復興計画や中長期的視野に立ったヴィジョンづくりなどでコミュニケーションデザインの専門家として何か参加できることはないだろうかと、自問自答を繰り返しています。同胞の夢や希望を灯し続けるために、何らかのカタチで貢献したい。日本中のみんながそれぞれの立場で考え始めています。また、世界中のみんなが応援してくれています。「生きる力」。それは、夢や希望によって支えられていきます。
    『VISIONS of JAPAN』。
    みんなの生きる道しるべとなる灯台が今後の日本に勇気を与えていきます。
    さて、そんな震災のさなかですが、今回も de sign de > のリレートークのポスターを作ることになりました。日経デザインの編集長、下川一哉さんとプロダクトデザイナーのムラタ・チアキさんが語られる内容は「デザイン行政で、日本は浮上する」。震災前に決められていたテーマです。昨日、交わされた内容の中で癌で生還したばかりの下川さんが「僕は、癌で一時的弱者となった。今回の震災や原発で日本も一時的弱者となったと考え、復興に対し多くのデザイナーの知を集め、世界を幸せにする提案をするのはどうだろうか?」と語られました。僕がこのポスターで伝えたかったことや震災直後から考え始めていたことと重なり、とても共感しました。
    「きれいな空気。きれいな緑。きれいな水」。日本にあったあたり前の風景が、最も貴重なものであったのだと、あらためて気づかされた2週間。あと、もう少しもすれば、あの残酷な自然の猛威が、あたたかな風と一緒に桜の花を咲かし始めることとなります。優しい光にくるまれたい。これが日本人みんなの偽らざる気持だと思います。広島、長崎の被爆に続きこの度の福島の放射能漏れによる被曝。また、数々の大震災にも見舞われてきた日本。それでも立ち上がってきた日本。僕らがやらなければならないのは、世界に問う健康で平和な国づくり。「一時的弱者」の僕たちが、いわゆる強者ではない、新しい価値を探る試練を神に与えられたのだと考え、何としても日本を復興させねばならないと強く感じた次第です。
    真っ暗闇の中で、仄か(ほのか)な明かりを灯す。そこに閃き(ひらめき)が生まれてくる。

    de sign de > talk 05 >
    第5回「デザイン行政で、日本は浮上する」
    話 し 手:下川一哉(「日経デザイン」編集長) ムラタ・チアキ(プロダクトデザイナー)
    開催日時:2011年3月25日(金)開始19:00–20:30終了予定(受付18:30 会場入口にて)
    参 加 費:¥1,000(1ドリンク付)
    本イベントでの収益は東日本大震災被災地へのお見舞いとします
    定  員:60名(椅子席は先着順/立見あり)予約不要
    ○ 終了後にコミュニケーションパーティあり(参加自由・ドリンク有料)
    会  場:中之島デザインミュージアム de sign de >
    大阪市北区中之島5-3-56 中之島バンクスEAST www.designde.jp
    主  催:中之島デザインミュージアム de sign de >
    問合せ先:Tel. 06-6444-4704 E-mail : info@designde.jp

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  • 三木組奮闘記『ジワジワ』

    久しぶりのコラムです。今日は、三木組の延長授業の話。
    課題『学校』のプレゼンテーションを授業最終日に開催したものの、あまりにもお粗末な内容。「時間がなかった…」「就活で忙しくて…」と、言い訳三昧。「僕の授業、単位を落とすと留年しますよ!」と、伝家の宝刀を「チラッ」と見せて、2週間後にプレゼン会場を大学から僕の事務所に移動して15週+1週の延長授業をやることに…。スタッフもオーディエンスとして参加。さて、どうなることやら?

    今回の課題『学校』は、グループでも個人でも可。
    まずは、自分たちの展覧会の準備で前半の授業にあまり姿を見せなかった4人組がグループ制作で挑んできました。「いたずら」をテーマに楽しい学校をつくるというのです。当初、学園ドラマにありがちな、過激な演出の『いたずら学校』のような企画でしたが、口を酸っぱくして「いたずらをする時の心理ってなんだろ?いたずらの楽しさはなんだろう?」と尋ねてきました。それでもどうしても学園ドラマのような発想から抜けきれません。例えば「廊下を走る子ども達に『走るな!』というのではなく、廊下にトラックのようなラインを引いて走らせる…」といった具合の内容です。理念やコンセプトをそっちのけで面白いや楽しいにばかり意識がとらわれています。ある日の授業で、グループの一人が自分のバンドが出演するフライヤーを僕にくれたのです。「君、バンドやってるんだ。ボーカル?」。「いえ、ベースです」。「どんな音楽?」。「ロックです」。「君たちのグループは、ロックを通して何をメッセージしてるの?愛、希望、不安、生、死…?」。「……」。「今度、クラスのみんなの前でメンバー連れてきてガ〜ンとやってくれよ。その時の演奏はオリジナルで、テーマは学校」。「……」。「その演奏が君たちの今回提案してくる学校の校歌だとしたら、どんな曲をつくる? それが、理念。それが、コンセプトになるんだ。歌や表現は、デザインってところかな」。「あっ!…」。この会話の翌週から彼らの中に本気モードが漂い始めました。
    『愉博学(ゆうはくがく)』という独自の理念で「いたずらをするように夢中で学んでほしい」という思いを込めて、学校中のいたるところにワクワクやドキドキといった学ぶことに積極的に向かいたくなるような仕掛けを提案してきました。教育方針は、「いたずらをときめきや夢中になる行為と位置づけ、子ども達の自発的な興味をのばす目的のために組み込む。また、体験的な学習を通して主体的な判断力や行動力を育むものとする」とあります。校則は、「毎日面白い事を見つける」と定められていて「1. 何が面白いかを判断する。2. ワクワクする6年間を過ごす。3. 一人を作らない。4. 物を大事にする」と綴られています。そして、それらの理念をダイアグラムで表現し、そこから導かれるツール類を通して理念を具現化させようというのです。「ほぅー。コンセプトの組み立て方、わかってきたじゃない」。好きな音楽に比喩することで伝えたいことが明解になってきたようです。
    さて、彼らの提案の中でユニークなデザインをいくつかご紹介します。まずは、ノート。ページのいたるところに吹き出し型のフレームや漫画のコマ割りなどが刷られています。授業のポイントを吹き出しの中に書き込んだり、難しい内容を漫画にすることで分かりやすく理解するのだとか。「なるほど!」。松岡正剛が実践する書籍に赤や青のペンでどんどん書き込んでいく読書の手法や、リチャード・ソール・ワーマンの「他人に説明できれば自分が理解した証だ」の理解の手法を彷彿させる独自のアイデアのように思える。その他にも机の天面いっぱいがスケッチブックになっていて落書きをするように学べる机や、名札に複数の色や柄を差し込んで自由にカスタマイズできるようになっていて、その色や柄を友達と交換し合える仕組みだとか。それ以外にも校舎のいたるところに暗号が仕掛けられていて、それを解く鍵が生徒手帳にあるとか。掃除を楽しみながら出来るようにと、教室の隅や机の足下に哲学的な言葉などが貼れるシールが用意されていて、それを探しながら掃除をするなど、いたずらに夢中になるように、学ぶ楽しさに気づける環境を作ろうとしています。「ところで、シンボルマークのトンボは、どういう意味なの?」と尋ねてみると、「トンボの眼って、複眼でしょ。子ども達の魅力を多様な視点で引き出すという意味。それと、この理念図、よく見るとトンボのカタチに見えてきませんか?」。「えっ!」。「なるほど!理念の図をトンボに見立てたわけか。理念の可視化ね!」。一本とられてしまいました。

    続いて、前回の授業『考現学百貨店』の『一本の線』で、今年の大学の広報物、全てを制作することになったIさんの登場です。『どこでも、がっこう』と名付けられたケース。8つのコンテンツと1つの物語が入っています。このツールを使って、実際の小学校に出かけたという設定でプレゼンテーションが始まりました。まずは、1.『記憶バンク』。「ひとは思いや気持をこころに記憶、あたまに記憶」「だけどもそれは目には見えない。自分を知るには自分をみること。思いや気持は記憶バンクにちょきんちょきん。ほうら、これでよく見える」と、立体絵本のようになったノートが準備されています。経験や体験をつなげることで、一つの物語とでもいえるアイデンティティが見つけ出せます。その手がかりを記すノートのようです。続いて、2.『つなげるつながる』。「なぜつながったのかとたずねると、つなげたからといっていた」「それじゃあ、わたしもつなげてみよう。つなげることは、たのしいたのしい」と、子ども達と手作りクリップを制作しながらコミュニケーションの重要性について語っていくとのこと。3.『いろいろいろ』。「あか、しろ、きいろ、あお、ぴんく。いろには、なまえが いろいろ いろいろ」「でもでも、ほんとにそれだけなのかな?そうだ、わたしがなまえをつけよう!わたしが決めた いろんないろたち」。11色のクレヨンが入っていて、子ども達と絵を描きながら色に独自の名前をつけていくそうだ。物語を作るきっかけを色の名前から始めるらしい。理念の声は名前。名前を考えることで考え方を明解にするのだとか。4.『あっ!』。「あっ!と思ったそのことは、あなたになにかのメッセージ」「忘れぬうちにシールをペタリ」。指先のイラストが描かれた付箋がたくさん入っています。「気づき」に気づけばアイデア開眼。「あっ!」こそ、発見のはじまりだとか。5.『なかったことにする』。「あなたの記憶、あなたの記録、あなたの気持」「たまに消すのもひつようだから、けしけしけし」と、修正ペンと消しゴムが用意されています。しんどいことを忘れて元気になる消しゴムだそうだ。忘却。忘れる力は、人に与えられたすごい能力。気持を切り替えることの大切さを伝えようとしている。6.『なくなるを生み出す』。「あなたがなくした いろんなもの 何かに変わって存在してる」「無駄なものなど、なんにもないね」と、鉛筆と鉛筆削りが入っています。描く事は、考え方の可視化。悲喜交々を描くことで新しい価値を見つけようということらしい。7.『とまるうごく』「とまるとうごくのちがいはなあに?」「とまるはとまって、うごくはうごく」「とまるがたくさんあつまって、うごいているのかもしれない」と、パラパラ漫画の束が準備されています。静止画の繰り返しで絵を動かしていく。命が宿る瞬間をメッセージするかのようだ。8.『ルール』「ルールがあってはじめて気づく。そんなことってありますよ?」「たまにはルールをこしらえて やってみるのもありですよ?」と、厚紙に切り取られたいくつものカタチ。重ね合わせて違うカタチを想像する。既成の概念を壊す。自分のモノサシを探しだす。ルールを超えたルールの話をするそうだ。
    いやはや、プチ哲学満載の文具キットを作ってきました。三木組のみんなが彼女のプレゼンテーションに引き込まれていきます。「これ、欲しい!」と声が上がります。このまま、自分の卒業した小学校で『ようこそ先輩』の授業ができそうな楽しい発想です。

    『わらいの たね がっこう』と題されたMさんの『学校』。「笑いが人を幸せにする」が理念。いいかえれば、笑いを繋ぐことで「喜びをリレー」していく『互恵の精神』をメッセージしていくとのこと。Mさん曰く、授業の始まりは子ども達に笑いに興味を抱かせるための「掴み」が重要との事。プレゼンテーションの際に僕の事務所の電気のスイッチをみつけるやいなや『福笑い』の『口』を近づけ、笑い顔に見立てていきます。「ほらっ、見方によって何でも笑顔になるでしょ!」と。僕もとっさにスイッチをON OFFと繰り返し動かしてみます。「こうすると笑顔に表情がつくよ!」と、即席でコラボレーション。真剣な面持ちの三木組のみんなにも笑顔が…。サヴィニャックがいってるように「ユーモアは、コミュニケーションの魔法の薬だ」。そこで、Mさんと僕の即席コラボレーションの様子をGIFアニメで制作してみると、ONとOFFのスイッチが「パチッ、パチッ」と表情を生み出してくれる。どうです? 誰でも思いつくアイデアだけど、ちょっと、楽しいでしょ!。こんな、単純なアイデアが意外と発展していきます。例えば、子ども達が小枝を拾ってきて角度を変えると「泣きと笑いの顔」が作れるし、笑ってる顔の表情に水滴を「ポタッ、ポタッ」と落とすと、うれし涙になる。そこで、「涙の理由」について子ども達とディスカッションをするのはどうだろうか?悲しい時の涙と、嬉しい時の涙の違いについて…。こんな風に僕の授業では、気づきを学生達とディスカッションをしながら見つけ出していく。「笑い」から転化して「涙」に行きつくことで、大人でも語り合うのに難しいテーマを小学生と話すことができるかもしれない。Mさん、ここがポイントですよ。コミュニケーションデザインの力がつけば、哲学や思想だって、子ども達と語れるかもしれない。
    この他にもユニークな『学校』がいっぱいありましたが、学生達は3回生の後期になると就活などでソワソワしてきて授業がちょっとおろそかになってきます。青田刈りする社会の仕組みに踊らされてしまう。学校は、就職のための通過地点じゃない。就職したって終身その企業にいる人なんてほんのわずかなのに…。みんなは、企業に何を求めているのだろうか?もちろん働いた対価を求めることは間違いではないけど、それだけではなぜか満足が生まれてこない。『やりがい』って何なんだろうね?企業や学校に入れば、簡単に手に入るものじゃないんだよね。自分の全力をどこかで出し切ったら、そこに『ジワジワ』と滲み出てくるものだよね。その『ジワジワ』が幸せを感じる時なんだよね。コンビニに行って「ジワジワください」っていっても売っていないよね。学校の中にだってないよ。もちろん企業の中にもないよ。あるのは、君たちの心の中。課題『学校』でみんなが作ろうとしていたものに共通していたのは、その『ジワジワ』だったでしょ。教わる立場と教える立場を逆転することで、「学ぶ」について「学ぶ」授業。理念を紐解く。その理念を具現化した授業を考える。そして、小学生の子ども達と哲学や思想について語り合えるぐらいの内容を組立てる。難しいですよね。そう簡単にはいきませんよね。三木組のみんな、少しは「学ぶ」について「学べた」でしょうか?この授業でみんなにいちばん気づいてもらいたかったのは、『ジワジワ』。だから、みんな三木組卒業。これから一生探すものも『ジワジワ』なんだよ。がんばって!

    さて、ここからは茶話会。事務所のスイーツ男子、『Oh! noスイーツ』の小野くんの力作、イチゴタルトやチョコレートケーキをたっぷり用意して…。「みんながんばったね!お疲れさま!」。『ジワジワ』忘れかけたらいつでも遊びにおいで…。

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