Works

Graphic

VISUALOGUE

わかりやすさの設計

世界グラフィックデザイン会議コングレスキット「VISUALOGUE」

Concept

「VISUALOGUE」は、世界グラフィックデザイン会議において、参加者一人ひとりに届けられる“知の航海図”として設計されたコングレスキットです。単なるスケジュールや施設案内の集合体ではなく、参加者の体験そのものを設計するための道具であり、情報と空間、行為を一体化する試みです。建築の複雑な構造を平面図で理解することの困難さを前提に、会場の吹き抜け部分に穴を開け、各階の平面図を重ねるという立体的な仕掛けを導入しました。これにより、会議場という物理的空間が、まるで手のひらの上で把握できる生きた地図のように変容します。さらに、キットの本体は脱着可能で、必要な情報だけを抜き出すことができる構造です。参加者は自らの知的リズムに応じて、情報を選び、再構築し、能動的に会議の体験を形づくることができます。当時は、まだWebが十分に充実していない時代でした。今であれば、これらの情報はデジタル上で完結させることも可能でしょう。しかし、このキットの発想が示すのは、物理的な触覚や空間的な関与を通じて、情報体験を能動的に組み立てる価値です。情報がいくらデジタルで手に入る時代であっても、人が「自分の手で扱い、順序を選ぶ」という体験は、依然として重要であり、新しいデザインの示唆を含んでいます。VISUALOGUEは、単に「見やすい」情報ではなく、「たどり着きやすい」情報の哲学を問い直します。案内板の先にあるのは、案内そのものではなく、参加者が自らの問いに出会う瞬間です。コンシェルジュが静かに示すように、余計なノイズを排し、参加者が必要とする情報に自然に手が届く。これは、情報と空間、そして人間の行動が交差するところで生まれる“ストレスフリーの知的体験”の設計です。VISUALOGUEは、会議参加者の手のひらに宿る、ひとつの思考装置であり、同時に情報デザインの新たな可能性を提示する、概念的なプロダクトです。

Credits

2003年