「水谷光宏作品集」は、近年の作品から初期作まで、およそ40年にわたる創作活動の中から選び抜かれた内容で構成されています。大阪芸術大学を卒業後、現代美術作家・泉茂氏に師事した水谷さんは、環境アートの仕事に携わりながら、独学で現在の空間デザイナーとしての立ち位置を築いてこられました。その出発点はあくまでアートにあり、やがてインテリア、建築へと領域を横断しながら、空間デザインという実践へと展開していきます。本書の巻頭で水谷さんは、「体験的価値である空気感を、自らの肌で感じ取ること」を大切にしていると語っています。その言葉どおり、素材への強いこだわりや、職人との密な協業は、水谷さんの活動を特徴づける重要な要素です。各プロジェクトにおいて自ら素材を探し、選び、時には収集のために各地を飛び回りながら、工房や職人と頻繁に対話を重ねていきます。そこでは計画通りに進むだけでなく、偶然の出会いに導かれるように、触発された素材からイメージを組み立て直すことも少なくありません。実際、私が依頼したプロジェクトでは、偶然見つけた雨ざらしの鉄板に惹かれ、あえて新品の鉄板と交換し、空間に構成されたことがありました。 水谷さんの空間づくりは、素材を見極める目や職人技といった身体感覚に対して、極めて繊細に神経を巡らせながら、機能的価値と情緒的価値が重なり合う地点を探り続ける営みだと言えるでしょう。本書では「建築・インテリア・アート」という三つのコンテンツで構成されていますが、それらは明確に分断された領域ではなく、互いに滲み合いながら立ち上がっています。その重なりの中にこそ、水谷光宏という表現者が生み出す〈水谷空間〉の本質が浮かび上がってくるのです。