Works

Graphic

富山県美術館

立山に向かってヤッホー

富山県美術館「TADコレクション ヤッホー」

Concept

コロナウイルスのパンデミックにより、外出もままならず、不安が社会を覆っていた時期。長い時間をかけて準備してきた展覧会が、突然中断や中止を余儀なくされるなか、学芸員の落胆は計り知れないものでした。そのような状況の中で、「少しでも地域の方々に、富山県美術館から元気な気持ちを届けられないだろうか」という相談を受けました。美術館は、作品を展示する場である以前に、地域とともに呼吸する存在です。困難な時代だからこそ、知や芸術のかたちを少し変え、気持ちに寄り添うこともまた、美術館の役割ではないかと考えました。そこで生まれたのが、Toyama Prefectural Museum of Art and Design の略称「TAD」をモチーフにした、ユーモラスな犬のキャラクターです。「富山県」ならぬ「富山犬」。美術館の前に広がる立山に向かって、「ヤッホー」と声を投げかける。その呼びかけは、山に向かうものでもあり、街に、そして人の心に向かうものでもあります。暗いニュースが続く日々の中で、ほんの少し笑顔になれること。意味を考える前に、気持ちがふっと軽くなること。そんな小さな余白をつくるため、あえて肩の力を抜いた、親しみのある表現を選びました。館内では、「ソーシャルディスタンス」「マスクで咳エチケット」「手を洗って清潔に」といったメッセージも、堅苦しさを和らげたポスターとして展開しました。注意喚起でありながら、思いやりを感じられるコミュニケーションを目指しています。この取り組みは、大きな声で何かを主張するものではありません。ただそこにあり、誰かの気持ちにそっと寄り添い、心を軽くする存在でありたい。「こんな美術館があってよかった」。そんな言葉が自然にこぼれるような、ささやかでチャーミングな対話をデザインしていきました。

Credits

Art direction:
Ken Miki

Graphic Design:
Ken Miki, Yoko Inuyama