KenMiki & Associates

建築家・I. M. ペイの設計によるMIHO MUSEUMは、中国の詩人・陶淵明（とうえんめい）の『桃花源記（とうかげんき）』にある桃源郷の世界を現代に蘇らせようとした建築です。自然、建築、美術が見事に調和したこの美術館に魅せられた写真家・東出清彦は、独自の世界観で、そこにうごめく心象の風景までもを写真に撮りたいと10年に亘りシャッターを押し続けてきました。
この仕事は、作者のライフワークともいうべき数万枚の写真の中から美術館を包み込む森羅万象の世界を表現すると同時に、I. M. ペイの描くストーリーラインをそこに浮かび上がらせるといった編集作業が中心になっています。
写真家の強いこだわりに何度も激論を交わしながら常に私の中にあったのは、デザインの痕跡をできる限り抑え、写真の魅力を最大限に引き出し、一枚一枚の紙に刷られた情報を一冊の本として束ねた時に、作者の描く「もう一つのMIHO MUSEUM」がそこに浮上すれば、という思いでした。