KenMiki & Associates

三木組卒業式


夏休み最後の土曜日に三木組『前期』の学生達を事務所に招待して『三木組卒業式』と銘打って茶話会を開催しました。茶話会といってもアルコールも準備したので結局は飲み会になってしまったのですが…。ちなみに、僕の授業は選択制で、『前期・後期』と15週で学生が入れ替わります。グラフィックデザイン学科の3回生を対象に『コミュニケーションデザインとは何か?』について研究しています。言い換えれば、「伝わる・気づく・感じるといった人の心に響くデザインって何?」と自らが問い続けることで、『コミュニケーションデザインにおけるおもてなし』を学ぶ授業なんです。「『おもてなし』ですか?」なんて声が聞こえてきそうですが、「そう、『おもてなし』なんです」。『茶の湯』の世界に『利休七則』ってあるのをご存知ですか?

一、茶は服のよきように点て
「服」とは、飲むこと。飲む人にとって「調度良い加減」に茶を点てること。「その時、その場所での客の気持ちを察して、よく考えて」と説いています。ただし、これは単に客の好みに合わせなさいといっているのではありません。
[相手の気持ちや状況を考える]

二、炭は湯の沸くように置き
ここでいう「置き」とは、「湯の沸くよう」にするための行為全体を表しています。釜の湯の沸く音を聞き、点前にかなった湯の熱さ加減を知ること。その加減の源となるのが炭。点茶における準備の重要性を説いています。
[本質を見極め、段取りをしっかり組む]

三、花は野にあるように
ここで注意しなければならないのが、「あるように」ということ。「あるままに」ではないのです。野に咲いていた花を感じさせるような生け方を表す言葉で、ただ写真に撮って「あるままに」を再現するのとは違うと説いています。つまり、野に何輪もの花が咲いていたとしても、一輪でそれが表現出来れば「あるように」といえるのです。余計なものを省く程、受け手の想像にふくらみが生まれていくのです。
[表現は、本質を知り、より簡潔に]

四、夏は涼しく冬暖かに
色や音などを使った感性を振るわす演出で『夏は涼しく冬暖かに』を表現してみる。『見立て』を介して、もてなす側と受ける側の知性と感性を刺激し合う。そこに深いコミュニケーションが育まれていくと説いています。
[もてなしは、相手を想う心で]

五、刻限は早めに
これは、単に時間厳守を説いているのではありません。いかなる場合でも、現実の時間よりも自分のイメージの時間が常に先行していれば、その時差が心の余裕となって平常心でいれると説いています。
[ゆとりを持って人に接する]

六、降らずとも傘の用意
「備えあれば憂い無し」とは少し意味が異なります。「憂い」とは自分自身の心配。 ここでは、招く客の立場になり、相手に「憂い」を持たせないために不測の事態を想定しておくと説いています。
[万人の憂いを想定して備える]

七、相客に心せよ
同席した客に気配りをしなさいということです。お互いに気遣い、思いやる心を持つように、と説いています。 これこそが、『茶の湯』の真髄といえる言葉。
[一期一会、無垢な心で]

といったわけで、「『利休七則』は、コミュニケーションデザインに繋がるでしょ!」。この『コミュニケーションデザインの極意』を三木組卒業式で感じてもらおうと、三木健デザイン事務所のスタッフ全員でおもてなしの準備です。午前中から2時間かけてお掃除して、買い出し。手作りでお料理を準備して、サプライズゲストにアコーディオン奏者のAZ CATALPA(アズ カタルーパ)に来てもらい歌ってもらう。はじめて彼女の歌声を聞いたのは、1ヶ月ちょっと前。プロダクト・空間デザイナーの柳原照弘さんのスタッフDavidがスイスに帰るお別れパーティーの日。アコースティックな音色が心にしみて涙が出そうになったんです。この感覚を三木組のみんなにも伝えたいと咄嗟に想い、その場で交渉。気持ちよく承諾してくれて、三木組卒業式のサプライズゲストとしてお迎えしたのです。三木組のみんな、楽しんでくれましたか。遊びも仕事も一生懸命だよ。そんなわけで三木健デザイン事務所では、『おもてなし』テストが今後の採用試験に入りま〜す。(笑)