9月20日(月)敬老の日に大阪市主催の『クリエイティブビジネスフォーラム2010 ークリエイティブ・デザイン都市大阪を目指して』というカタカナの多い、長い名前のフォーラムに参加しました。これ、今秋、大阪市内で開催される数多くのデザインイベントを広報の側面から支援する大阪市の『クリエイティブストリームオオサカ』(また、カタカナばかり…)の活動の一環として計画されたものです。いやはや、あまりのカタカナの多さにこのコラムを書きながらも自分でも何を言っているのかよく分からなくなってしまいそうです。
その催しの前夜、twitterで、なにげに大阪市長のつぶやきを聞いてみると「帰宅途中です。明日は昼から中央公会堂でご挨拶、その後市役所玄関ホールでシンポジウムに参加します。クリエイティブストリームオオサカのキックオフイベントです」とあるではないですか。それに対して「カタカナばかりですね。日本語でいうとどうなりますか?」という市民からのつぶやき。今度は市長が「玄関広間で集団討議、大阪の創造的流れの開始行事です」(汗)…。と、返信。まるで漫才を聞いているような会話です。突っ込みのセンスよさ。返信の見事さ。これは相当のコミュニケーション力です。笑いは極めて高度なコミュニケーションによる相互理解から生まれるもの。この会話に僕も思わず乗って「その集団討議に参加する三木健です。明日、何話そうかな。考えても仕方ないか。言葉は生き物。みんなの言葉を受け止める脳のすき間をしっかり開けておくだけ。借景ならぬ借脳で行こうっと」と、つぶやいてみると、市長から「オォ!三木さんもツイ繋がりですね。明日、楽しみにしています」と。市長の返信に心がなごみます。「いっしょにやりまひょ!」がキャッチフレーズの市長。「ほな、いっしょにやりまひょ!」と心で叫んで翌日を迎えます。
そのカタカナいっぱいの討議(フォーラム)ですが、まず壇上に市長が上がり、特別顧問に就任された喜多俊之さんを迎えての対談。その後が僕たちの出番です。『大阪を「デザイン」で輝かせる』が議論のテーマ。わかりやすさの設計・地域らしさの設計・活力と経済を生み出す設計といった3つの視点から『暮らしとデザイン』豊かさってなんだろう?・『交流とデザイン』 わくわくするってなんだろう?・『観光とデザイン』地域らしさってなんだろう?・『環境とデザイン』持続可能ってなんだろう?・『経済とデザイン』 潤うってなんだろう?と、5つの質問にパネラーが答える流れ。そのパネラーの言葉の断片が、直ぐさま編集者により切り取られてスクリーンに投影されていきます。パネラーの言葉がどんどん積み上げられて、まるで情報の建築物が建っていくような感じです。通常、デザイナーのセミナーは、ほとんどが自らのデザインを持ち出し、その発想や背景を語るものです。しかし、今回はそれぞれのパネラーが言葉でヴィジョンを可視化する試み。よって、自己紹介の5枚のスライド以外は、5つの質問に関するスライドのみ。観客のみなさんの脳の中でも議論が進むと同時にスクリーン上に積み上げられるキーワードによって刺激を受け、それぞれの経験や価値と共にいくつもの情報が建築物のように可視化されていくのではと想像します。
まさに「話すデザイン」が繰り広げられていきます。大阪市の大きな吹き抜けの玄関ホールを特設会場にした議論の場、これぞ公共空間の大きな『すき間』の有効利用です。『すき間』があることで活用が多彩になる。これを機にこの空間で「演劇なんかが開催されたらいいのにな」と僕は、壇上で密かに考えていました。その時です、進行の間宮吉彦さんから「三木さんの考える暮らしとデザインについて,豊かさってなんでしょう?」と、質問が…。
僕は、とっさに「そうですね、暮らしの中に『すき間』をつくることでしょうか。地域主権や地域経営が叫ばれていますが、例えば、大阪市が『デザインの日』と『暮らしの日』を設定して休日という『すき間』つくるとします。9月20日敬老の日、続いて21日を『デザインの日』にする。そして、22日を『暮らしの日』として23日の『秋分の日』に続けて、大阪市の『秋のゴールデンウィーク』をつくる。そうすることで、5月のゴールデンウィークに観光や経済が集中するのを緩和する。暮らしに『すき間』をつくるという仕組みを設計することがデザインといえないだろうか。デザインは、色やカタチも重要だけど…。『すき間』が暮らしに豊かさを生み出すように思います」と、発言。(この続きは、USTで聞いてね!なぜか、市長と喜多さんの始まりは、音声が途切れていますが…。)パネラーの服部滋樹さんの微笑みながらのうなずきに僕は調子に乗って、「大阪市は、5月の連休を返上するとか?」と話すと、会場からクスクスと笑いが。「オォ!笑いによる相互理解です」。
こんな感じの議論でしたが、ちょっと、残念だったのは、この中に女性のデザイナーがいなかったことです。たくさんの優秀な女性のデザイナーがいるわけですから、彼女達の考える大阪について聞いてみたかったと思いました。また、時間の都合上『経済とデザイン』 潤うってなんだろう?が議論されずに終わったことです。とはいえ、デザインが、暮らし・交流・観光・環境・経済、これに加え教育や医療や福祉などあらゆる分野に有機的に繋がり、その関係性の中から『大阪を元気にする』役目を担うことであるという趣旨はメッセージしたつもりです。でも、時間の関係や言葉足らずで、上手く届いていないようなら、このような機会を頻繁につくり、多くの人とデザインについて語れればというのが僕の思いです。
平松市長、またいつか『大阪とデザインについて』語らせてくださいね。「いや、カタカナあらため、『大阪と設計について』いっしょにやりまひょ!」(笑)。