KenMiki & Associates

大陸時間は、あんなにゆっくり流れているのに…。

GDCというデザインアワードの審査と講演で中国に行ってきました。23日に出発して26日の帰国という強行軍です。香港経由で深圳に入るルートで主催者が香港の空港まで迎えに来るという連絡が入っていたのですが、到着してみると誰も来ていません。「ウヘェー」。出発までバタバタの状況でしたから、香港から深圳までの移動方法を詳しく調べていなかったのです。担当者に電話するも不通。「ドヒャー」。空港の2つの出国口を何度も確かめるのですが本当に誰もいません。どうやら、自力で深圳に向かわねばと思い始めたところにGDCのサインを持った学生らしき女の子二人がトロトロと歩いて来るではないですか。
「お前ら、空港に到着時間に迎えに来ると連絡してきておいて、遅れて来るとはどういうことなんや!」と、言いたいところですが英語が出てきません。彼女らの「nice to meet you!」にこちらも笑顔で「ニーハオ!(称好)」。まぁ、彼女らに文句を言っても始まらないかと思いきや、今度は、海外から来る他の審査員の到着時間まで1時間以上空港内の喫茶店で待って欲しいというのです。「やれ、やれ」です。香港から深圳まで車で一時間と聞いていたのに、今度は車中で香港と中国のイミュグレーションを2回通過するのにまた1時間。同じ中国なのに出入国があるのが不思議です。朝一番の飛行機で飛び立ったのにホテルに着いたら夕食の時間になっています。それにしても大陸的時間というのか、翌日からの本番が危ぶまれます。
翌朝。青木克憲さんの講演を聞き、午後からの審査です。審査会場にところ狭しと作品が埋められています。文化の違う作品群を見るだけで昨日の疲れも吹っ飛び、テンションが上がってきます。主催者から審査方法の簡単な説明と同時に審査員の名前の刷られたシールが配られ一次審査の開始です。ポスター、書籍、V.I、タイプフェイス、シンボルマークなどのカテゴリーがざっくりと分けられていますが、どうやらまとめて審査を進めていくようです。日本では、カテゴリーごとの審査が通常で事務局がテキパキとシステマチックに準備をしますが、何かゆるい感じの雰囲気です。作品の下に作品が埋もれていたりもします。気に入った作品に審査員の名前シールを貼付けていくのですが、粘着力が強すぎて作品から剥がれません。無理矢理剥がすと破れる始末。入選作の撮影どうするんだろうと心配しながら1日目が終了です。
審査2日目。それぞれのカテゴリーの賞候補を午前中に決め、午後一番から会場を移動して僕の50分の講演が予定されていましたが、欧米のデザイナーと日本のデザイナーの間で賞候補の意見が食い違います。グリッドシステムに代表される構築的な組み立てを重視する彼らと、感性を覚醒するような世界観に重きを置く僕たちの間に文化の壁が立ちはだかります。議論に1時間近くかかってしまう作品も出る始末。午後の講演の観客は、すでに会場入りしてしまっていますが誰一人として引き下がりません。
講演の始まりを遅らせても意見がまとまらず、講演後に再度仕切り直すことでやっと同意。僕は、食事もしないままに講演会場に突入です。「Design as we talk」と題した講演を無事済ませて審査会場へダッシュ。審査はもめにもめ、予定を大幅に越えたため結論は主催者側の中国のデザイナーに預けることになりました。ただし、この議論を年鑑に記録することと条件がつけられました。そこから超ダッシュで伊藤直樹さんの講演会場に戻ります。彼は、アドバタイジングとインタラクティブの審査を受け持っているので僕たちとは違うチームで審査しています。「ハァハァ」いいながら会場に入りましたが、すでに講演は始まっています。とてもいい内容で途中からの参加が残念です。終了後、遅い夕食をとっていたら主催者がやって来て学生審査の一部に抜けがあったということで再度会場に戻ることになります。「えぇ〜」。抜け落ちていた審査終了後、中国のデザイナーの集まるバーに出かけて歓談。僕は、大阪での矢萩喜從郎さんのトークショーに出演のため、みんなより一足先に帰国する予定です。翌日の田中竜介さんの講演を聞くことができません(田中さんゴメン!)。夜中の2時にホテルに戻り荷造りを済ませ、朝の6時には空港へ向わねばなりません。いやはや、お土産を買う時間もなしの強行スケジュール。大陸時間は、あんなにゆっくり流れているのに…。それでも文化の違いをたっぷり味わえた深圳への旅。通訳の宋さん、いろいろとありがとね!