KenMiki & Associates

耕す。育てる。

毎年恒例の天神祭の集いを7月25日に開催しました。
僕の事務所は天神橋と難波橋のちょうど中間の川沿いにあり、目の前を祭りのメインイベントの一つ陸渡御(りくとぎょ)の行列が通ります。総勢3,000人。巨大な太鼓を、シーソーのように大きく体を揺らしながら「ドドドン!」とたたく催太鼓(もよおしたいこ)から始まり、日本神話に登場する神、猿田彦(さるたひこ)、道を清める神鉾(かみほこ)、色鮮やかな衣装の稚児(ちご)や采女(うねめ)が彩りを加え、地車(だんじり)、獅子舞(ししまい)、牛曳童児(うしひきどうじ)などが連なります。そして、平安時代の貴族の乗り物、御羽車(おはぐるま)や菅原道真公の御神霊を乗せた御鳳輦(ごほうれん)が第二陣でやってきます。最後に鳳神輿(おおとりみこし)と玉神輿(たまみこし)が事務所の前を通過する頃には、僕はずいぶん出来上がっています。荘厳な雰囲気で時代絵巻を見ながらのお客さまとの歓談。ついついお酒が進みます。陸渡御を終えた一団が天神橋のたもとから船に乗り込み、祭は船渡御(ふなとぎょ)へと移ります。御神霊を乗せた御鳳輦船(ごほうれんせん)を中心に100隻の船が大川を行き交い、5,000発の奉納花火が夜空を真っ赤に染める頃、祭はクライマックスを迎えます。
こんな一大ページェントが繰り広げられるエリアに事務所があるものですから、仕事どころではありません。毎年、のんびりしたスタッフは祭が始まっても仕事に追われ、途中からしか参加出来ないハメになっている者もいますが、今年は土曜日。みんな気合いが入っています。
ゲストに「街場の教育論」など多数の著書や講演で大活躍の内田樹さん(書籍はもちろん、ブログ無茶苦茶面白いのでお勧めです。http://blog.tatsuru.com/)や僕のコラムでもおなじみの画家の山本浩二さんと奥様のソプラノ歌手の森永一衣さん、サントリーミュージアムで開催された「純粋なる継承」の写真が素晴らしかったカメラマンの奥脇孝一さんご家族など、たくさんの方々にお越しいただきました。この祭、大阪天満宮が鎮座した2年後の天暦5年(951年)より始まったとされていて、今年で1,050年を迎えるそうです。約11世紀ですよ!(50年という長い時間を「約」といって、1世紀に数えてしまうぐらいの時間の流れ、すごい歴史でしょ。)これを文化といわずしてなんといいましょう。天満宮の氏子になって「三木氏」の入った提灯をかかげ、祭を祝う。この提灯の「あかり」がやっと事務所に似合うようになってきました。
この「あかり」が文化です。
グローバルな社会になればなるほどローカルが輝きます。いや、輝かせなければなりません。
仄かな「あかり」で地域を灯す。一年に一度みんなで集う。文化は耕すもの。育てるもの。だって、Cultureの語源、Cultivateが「耕す」「育てる」という意味なんですから。僕たち三木健デザイン事務所もこの地域の方々にお世話になり、この地の文化に育てられています。
「輝く未来」なんて言葉はあまり信用できませんが、仄かだけど、ずーっと灯ってきた「あかり」になぜか未来を想像します。