KenMiki & Associates

志と解放

ひさしぶりのコラムです。このところ、鳥取、岐阜(2回)、京都(数えきれない)、東京(3回)とあわただしく移動が続き、先日は福岡の予定をキャンセル。一昨日まで3日間連続の撮影。その間に事務所のスタッフ募集で複数のデザイナーを面接して、携帯電話をiPhone 3GSに変更。iPhone の不具合、慣れない操作に「フゥ、フゥ」いいながら、今、また東京とんぼ返りの新幹線の車中。この移動時間にやっとコラムにたどり着きました。
みなさん、お待たせしました。(待っていないか?)それにしてもバタバタです。
再来週からまた撮影の予定が入っていて、事務所でいつ仕事をするんだろう?(ウゥ〜)
走りながら考えているといえばかっこいいのですが、なかなか落ち着いてデザインに取り組む時間がありません。頭でデッサンをしてデザインを進めるもリアリティが湧いてきません。粘土を捏ねるようにイメージを探って「おぉ、これこれ」といった感じの指先が喜ぶ感覚を忘れそうでちょっとヤバイです。脳と体が同期するような「決まった!」という満足感にここ1ヶ月、ご無沙汰でした。昨日、久しぶりの事務所でクライアントと打ち合わせをしながらラフスケッチを描いていたら、急にデザインの神様が僕の指先に降りてきてアイデアが無茶苦茶ジャンプするではありませんか。平面で考えていたアイデアが立体的に広がって「来た〜」という感じです。カッターナイフを持ち出して平面のラフスケッチを立体的に組み立てはじめたら、クライアントの目がどんどん丸くなっていきます。その丸くなっていく目とシンクロするように僕の結構ヤバかった指先と脳に喜びの血液が戻ってきます。トキメクとでもいうか、ワクワクしてきて小躍りをしたい気分です。抑制をされていたクリエイティブな心がどんどん解放されていく。これって、前回のコラムで書いた宇治の茶葉が光を遮断されることで太陽の光を求めておいしさが増すというあの感覚じゃないだろうか?なんか植物の気持ちがちょっとわかるような気がします。
今回の移動では、伝統工芸の職人と出会ったり、立体成型の工場を視察したり、洋菓子会社の製造現場の撮影だったりとモノづくりの現場に触れる機会が多く、それぞれの現場でそこでしかできない技やこだわりに出会いました。僕にとっては、どれも目を丸くするような刺激でずいぶんみなさんの手を止めてしまいましたが、モノづくりの力とでもいうか、形づくられるまでの試行錯誤を乗り越えた『誇り』のようなものをいずれの場所でも感じました。そんな刺激を受けまくりの移動ですから、久しぶりのデザインワークで脳に溜まったモノづくりの欲求が一瞬にして爆発してもおかしくありません。前文で「抑制されたクリエイティブな心がどんどん解放されていく」と書きましたが、本当は「抑制された」ではなく「刺激されたクリエイティブな心がどんどん解放されていく」が正しい感覚です。抑制されたダイエットの後のリバウンドのようなクリエイティブには魅力がないのです。いわば、刺激がクリエイティブに向かう「志」を築き、その「志」によってデザインが解放されるのです。それにしても疲れました。脳と体も解放したい。

ここに紹介するビデオ、新大阪に到着する寸前にiPhoneで撮影したものです。「ピン ♪ ピン ♪ ポン♪ ピッ ♪ パ〜ン ♪」「まもなく新大阪です。…」この音声が流れると、やっとホームにたどり着いた感じです。長い旅だった。いゃいゃ、まだまだ続くんだろうなぁ〜。ひとまず今日は家に帰って、お風呂で汗を流し、ビールで体をゆるゆるにしたい。
『デザインは「志」が解放する』。これ、旅で学んだ教訓です。