KenMiki & Associates

繋がる

新年の挨拶で久しぶりに親戚が集まり、幼かった子ども達が見違えるほど成長していました。ずいぶん前は、無邪気に戯れてよく遊んでいた子ども達が何故かよそよそしい感じなんです。気恥ずかしいのか、思春期のせいか、それぞれの兄弟でボソボソと会話を交わしますが、その会話もなかなか弾みません。僕がみんなに話しかけてみるものの、返事も「ハイ」というような律儀な感じで妙に距離を感じます。こちらもじょじょに緊張してきて言葉数が減ってしまい、何気につけられているテレビの音声が部屋中に響いている状況です。
食事が終わりしばらく経った頃、場の空気を感じていたのか、娘が持参した『水道管ゲーム』を差し出し「誰かする?」と切り出しました。このゲーム、1976年にアメリカのパーカー・ブラザーズより発売された『WATER WORKS』が正式名称で水道管のバルブから蛇口まで、規定枚数以上のパイプカードを早く繋げた者が勝者となります。ただし、他のプレイヤーに対してパイプを水漏れさせて進行を妨げることが出来ます。極めて単純なルールなんですが、それゆえ誰もが参加出来る楽しいゲームです。また、カードの水道管のイラストがいい味を出しています。そのゲームを始めてまもなく、子ども達のよそよそしかった雰囲気が和み、以前の無邪気に遊んでいた頃の表情にどんどん戻っていくではありませんか。周辺にいた大人達がそのゲームに参加し始める頃には、まわりの子ども達から声援が出るほどの盛り上がりです。
このゲームの水道管、繋がった瞬間が実に嬉しいのです。映画『黒部の太陽』の北アルプス山中を貫くトンネル工事の貫通シーンを思い出すというと大げさかもしれないですが、「繋がる」ということに向って、僕たちは生きているのかもしれないなんて哲学的な発想に至るほどです。
わかりやすいルールに多くの人が参加し、そこに無数のコミュニケーションの流れが誕生する。そして、大きな輪が繋がれていく。デザインを通して僕が築きたいのは、そんな「繋がる」というコミュニケーションの輪なんだと、あらためて気づかされた新年でした。
今年一年、みなさんに素敵な「繋がり」が生まれますように…。