KenMiki & Associates

CAFE

いま、多くの人が心や体がうれしい納得できる商品やサービスを選ぼうとしています。食品の素材や産地にこだわるのも、その一つ。そして、心のこもっていない過度なサービスを避け、自分のリズムで過ごせる「気持ちのいい空間」を求めています。
今日、京都駅の八条口にオープンしたマールブランシュCAFE。僕がお手伝いした最新の仕事。インテリアデザインは、辻村久信さん。京都ならではの「優雅さと合理性」とでもいうか、駅中にあるカフェとして無駄を省いたシンプルなサービスで自分のリズムで過ごせる、いごこちのいい空間を目指しています。壁にかけられたヴィジュアルには、このカフェのおもてなしの心やサービスが語られていて、布地に絵を染め、文字部分に刺繍を施し、素材感や手作り感にこだわった仕上げになっています。また、手ぬぐい・あづま袋・巾着袋といった京都ならではのグッズもデザインしました。
おいしさにこだわり、いごこちにこだわり、人それぞれのリズムを大切にする。そんな新しい京都スタイルのカジュアルなカフェ、お近くに行かれた時に一度のぞいてみて下さい。
お茶を一服、お菓子でほっこり。

トイレ

事務所のトイレに身長2cmの小さなフィギュアが置いてあります。男性が小用をたそうとすると、目の前のタンクの上からちょうど大事な辺りを双眼鏡で覗いているんです。初めて来られたお客さんがトイレに入られると、何となくニヤッとした顔で出てこられます。緊張する打ち合わせに、ちょっとしたユーモアが雰囲気をなごませます。
そういえば、最近よく公衆トイレの男性用便器に貼付けられた小さな標的。これを目がけて用をたすことで便器周辺の汚れが少なくなるそうです。アムステルダム空港のトイレの「ハエの標的」がとても洒落ていますが、標的目がけて一気に発射ということなんでしょう。
これぞ、「行為のデザイン」。
機能性を高めるのもひとつのデザインですが、コミュニケーションの流れを良くするのもデザインの役目。事務所のトイレの身長2cmの小さなフィギュア、カラダとココロの新陳代謝をよくする「緩和のデザイン」といったところでしょうか。

子どもの頃、漢字の覚え方で「イチ、クチ、ソ、イチ、イチ、ノ、メ、ハ」で『頭』という漢字になるというのを亡くなった父に教えてもらったことがあります。
「一、口、ソ、一、」で豆,「一、ノ、目、ハ」で頁。豆と頁で『頭』という訳です。『頭』という漢字を見つけると、今でも鼻歌まじりで「イチ、クチ、ソ、イチ♪♪♪…」と嬉しくなります。先日、知人の母親が米寿(べいじゅ)を迎えるというので年齢とその呼称について語源や由来を調べてみたら、米寿は、数え年の88歳のお祝いで「米」の字が八十八と分解出来ることからとありました。米寿の語源は、何となく知っていたのですが、99歳の白寿(はくじゅ)が「百」の字から一をとると白になるからとか、108歳の茶寿(ちゃじゅ)が「茶」の字を分解すると「十、十、八十八」と分解できるためとか、111歳の皇寿(こうじゅ)が「皇」の字を分解すると「白 (=99)、一、十、一」と分解できるためとあるではないですか。漢字を分解する発想に遊び心があるというか、粋な見立てに国語と算数が一緒になったような楽しさがあると思いました。僕のデザインの発想の仕方は、テーマの根源にある価値を見つけ、それをじっくり観察した後、一度「分解」して再構築や再編集をしながらコンセプトを見つけていきます。子どもの頃の『頭』の漢字の覚え方が、今のデザインの発想の仕方とどこか繋がっているように思います。

ガウディ

この不思議な造形物、いったいなんだと思われますか。
ずいぶん前にバルセロナに行った時に見つけたガウディのドアノブなんです。ガウディが設計したアパートメント『カサ・ミラ』にこの種のデザインが今でも使われていて、それを限定で復刻したのがこのドアノブです。
長い間、文鎮として使っていたのですが、いつの間にか引き出しの奥で眠っていて、数年前に事務所を引っ越した際に打ち合わせ室の小さな扉に取り付けました。真鍮で出来ていて磨くとピカピカになるんですが、バルセロナのアパートメントの使い込んだ真鍮のイメージそのままに、磨かずにおいてあります。何か生き物のようなすごいフォルムですが、手にフィットして使い心地も申し分ありません。
ドアノブひとつにもオリジナリティを求めようとしたガウディの気概に負けまいと、打ち合わせ中に難題を持ちかけられた時は、こっそりこのドアノブを見て勇気をもらいます。

掃除

三木健デザイン事務所では、水曜日と金曜日の朝、週に二回の「中掃除(ちゅうそうじ)」があります。大掃除ほどではないですが、スタッフ全員で床までゴシゴシと雑巾で磨きます。
もちろん僕も参加してゴシゴシやります。たっぷり、1時間以上かけての掃除です。夏場は、汗びっしょりになって着替えが必要なぐらいです。決して掃除好きではありません。綺麗にすることで気持ちがいいのはもちろんですが、働き方がすごくスムーズになるんです。効率がいいとでもいうか、何もかもがテキパキと動き始める感じです。腕のいい料理人の綺麗に片付けられた調理場や、高品質な商品を生み出す工場の整理整頓された環境に憧れます。
いい仕事をする所は、どこも足元が綺麗に片付いています。