ギャラリー間(MA)で開催されている安藤忠雄さんの展覧会に出かけました。
原寸大で再現された「住吉の長屋」の模型がお目当てです。その原寸大の模型、大胆にもギャラリーの展示会場と中庭を区切るガラスを取り除いてしまい、一部が展示会場に突き刺さるように建てられていました。模型といっても入り口や階段部分は本物と同じコンクリートで、一階部分には実際に入ることが可能で、安藤建築の原点ともいえる「住吉の長屋」をリアルサイズで体験することができます。中庭の上空に切り取られた空は、光や雨が降り注ぎ、内と外が一体となっていて自然の存在を強く意識させるものでした。実際、中に入ってみると想像していたよりも狭いというのが僕の正直な感想です。いろんなメディアで紹介される写真などから、この建物の勝手なスケール感を描いていたのかもしれません。以前に10分の1の模型を見たこともありましたが、やはり実際の空間に身を置くのとではずいぶん印象が違いました。
原寸に触れる。「自分の身体をものさしにする」。そこには、使いやすさや動きやすさといった「機能的価値」と、ワクワクやドキドキといった「心理的価値」の二つの価値を見つけることができます。ずいぶん前にトルコのブルーモスクに行った時に、想像を超える高い天井から差し込む光や室内にびっしりと敷かれた絨毯からしんしんと伝わってくる冬の寒さ、街中に響くコーランなど、今までに出会ったことのない体験に、自分のスケール感がどんどん小さくなっていく感じになったことがあります。いま思うと宗教建築の果てしもない大きさの中に飲み込まれていたのだと思います。いわば、「自分の身体をものさしにする」その「ものさし」を見失ったような状態です。
原寸。そのサイズは、数値上ではどこまでも1:1なのですが、眼に映る「機能的価値」と、眼には映らない「心理的価値」の二つ価値の間で揺れ動くことになります。時にして大きく、また、時にして小さく感じることもあるのです。