KenMiki & Associates

社会の眼差し

風や水の力で動く立体造形作品で、世界的に知られている新宮晋さんと久しぶりにお会いしました。新宮さんの作品は、関西国際空港やサントリーミュージアムなどの公共施設や美術館で、また、公園や街の中で、世界中のさまざまな所で、まるで地球が呼吸するかのように自然のエネルギーを取り込んで動いています。絵本を出版されたり、舞台の企画や演出を行うなど、多彩な活動で世界中を飛び回られています。
僕が思うに、新宮さんの全ての創作活動には「自然」や「環境」といった大きなテーマが一貫しており、風や水など地球を循環する自然のエネルギーや地球に暮らす生物や植物に感心を注ぎ、人間の側からの身勝手な自然観ではない「共生」や「共存」を表現しているように感じます。
新宮さんとは、ずいぶん前に知り合って兵庫県の三田のアトリエにお伺いしたり、作品集の装幀をお手伝いしたりと長くお付き合いをさせていただいています。お会いする度に、新宮さんが考えているヴィジョンやスケッチを見せていただき、2時間ぐらいゆっくりとお話をします。いつも新宮さんの頭の中を見せてもらっているような知的好奇心に誘われ、ついつい時間を忘れてしまいます。今回も地球規模のプロジェクトのお話を聞きましたが、その内容は内緒。
新宮さんの作品を眺めていると、眼には映らない風の動きを感じると同時にその風の動きが絶え間なく変化していることにいつも驚かされます。モノを創るということは、理念を具現化させるということですが、同時にその創られたモノが社会や環境の絶え間ないうねりの中で生かされているというのを新宮さんの作品が気づかせてくれます。
デザインも、作者の個性や依頼主の望みが重なって具現化されていくものですが、社会の眼差しにしっかりと応えた必然性のあるものでないと「受け入れられないんだ」とつくづく感じます。僕の事務所にある新宮さんの作品は、今日も秋の風で静かに動いています。